新規事業の立ち上げでは、明確な計画と理論的な裏付けが必要不可欠です。しかし、アイデアの整理や計画の実行プロセスにおいて、どう進めればよいか迷うことも多いでしょう。
そんなときに役立つのが、理論的に構築されたフレームワークです。フレームワークは、ステークホルダーを納得させる資料作りや効率的な進行管理に大いに貢献します。
本記事では、新規事業の立ち上げやアイデア整理に便利なフレームワークをご紹介します。
この記事を参考に、具体性のある新規事業計画をスタートさせましょう。
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新規事業が企業にとって重要な理由
新規事業の立ち上げは、企業が持続的に成長し、競争力を維持するための鍵です。市場環境の変化や技術革新に対応しながら企業価値を高めるには、新しい取り組みを積極的に進める必要があります。
ここでは、新規事業が企業にもたらす具体的なメリットについて解説します。
企業の発展力の向上に繋がる
新規事業は、企業の発展力や競争力を高める重要な手段です。市場環境は常に変化しており、既存の事業だけでは成長が停滞するリスクがあります。
このような中で、新たな分野に挑戦することは企業が市場における存在感を維持し、さらなる成長を実現するための不可欠な戦略です。
また、新規事業は企業の収益基盤を多角化する効果もあります。特定の事業に依存するリスクを軽減し、安定した経営を実現するためには多方面での成功が求められます。
さらに、新しい市場に進出すると企業のブランド力や顧客基盤を拡大し、長期的な競争優位を築くことが可能です。
人材育成にも繋がる
新規事業の立ち上げは、企業の成長だけでなく将来を担う経営人材の育成にも寄与します。新しいプロジェクトを担当する中で、社員は課題解決力やリーダーシップ、企画力といったスキルを磨く機会を得られます。
経営や資金調達などを通して、将来的に企業を率いるリーダーの育成につながるでしょう。
また、新規事業のプロセスではさまざまな部署や外部パートナーとの連携が必要になるため、チームワークやコミュニケーション能力の向上にも貢献します。新規事業の立ち上げに携わった知識やスキルは、個人の成長に直結するだけでなく、企業全体の競争力向上にも繋がるのです。
新規事業を通じて育成された人材は、企業の持続的な成長を支える重要な資産となります。企業が次世代のリーダーを育てるためにも、新規事業への取り組みは欠かせません。
新規事業を立ち上げるプロセス
新規事業を成功させるには、具体的なプロセスを順序立てて進めることが重要です。計画段階から実行、事業運営後の改善に至るまで、各フェーズで適切な対応を行うことで、リスクを抑えながら目標達成に近づけます。
ここでは、新規事業を立ち上げるための主要なプロセスを詳しく解説します。
以下にて、詳しい流れを解説します。
1.企業の課題や新規事業のアイデアを考える
新規事業を立ち上げる最初のステップは、企業の現状や課題を明確にして新規事業のアイデアを考えることです。市場の変化や競争環境の中で、どんな機会が存在するのかを見極めることが重要です。
例えば、自社の強みを活かせる分野や既存の事業では解決できない顧客ニーズを洗い出し、新たな価値を提供できるアイデアを構築します。
また、社内外の関係者と意見交換を行い、多角的な視点を取り入れることで実現性の高い事業アイデアが生まれる可能性が高まります。最初の段階で幅広い視点でアイデアを出し、後の段階で精査するための基盤を作ってください。
2.市場・顧客のニーズを調査する
次に、新規事業の成功可能性を高めるため、市場や顧客のニーズを詳細に調査します。市場調査は、競合他社の動向や顧客の購買行動を分析し、事業の方向性を決定する重要なプロセスです。
具体的には、アンケートやインタビュー、既存の市場データを活用して、ターゲット顧客の課題や求めている価値を深く理解します。
また、競合の強みと弱みを把握し、自社がどう差別化を図れるかを明確にします。調査した情報を基に、新規事業が市場でどんなポジションを取れるかを検討してください。
3.事業計画を立てる
市場調査の結果を踏まえ、実現可能な事業計画を立てます。具体的には、目標設定、具体的なアクションプラン、収益モデルの設計などを行います。
事業計画は、新規事業を推進するための地図のような役割です。
また、事業計画では必要なリソース(人材、資金、技術など)やリスク管理の方針も明記します。特に、短期的な目標と長期的な展望をバランスよく設定することで、柔軟性のある計画を構築することが重要です。
事業計画を基に、ステークホルダーからの支持を得て、プロジェクトを前に進めます。
4.新規事業の立ち上げを実行する
計画が整ったら、新規事業の立ち上げを実行します。この段階では、リソースを適切に配分し、タスクの優先順位を明確にして進める必要があります。
具体的には、プロジェクトチームを編成し、各メンバーの役割を明確化することから始めてください。
また、実行フェーズではスケジュール管理や進捗確認が重要です。特に、予期せぬ問題や課題が発生した場合には、迅速に対応し、プロジェクトの方向性を修正することが求められます。
プロジェクトの進行状況を定期的に報告し、関係者との連携を密にするとスムーズな立ち上げが可能となります。
5.事業立ち上げ後:課題を見つけ改善し続ける
新規事業を立ち上げた後も、継続的な改善が必要です。事業の運営を通じて得られるデータや顧客からのフィードバックを分析して課題を特定して対策を講じると、事業の成長を促します。
例えば、顧客満足度の向上やプロセスの効率化、新たな価値提案の開発などが挙げられます。また、定期的に市場環境や競合の状況を再評価し、変化に対応するための施策を講じることも重要です。
改善を繰り返すことで、新規事業は持続的な成長を遂げられます。
フレームワークとは?
フレームワークとは、情報や物事を体系的に組み立てるための枠組みや型のことを指します。ビジネスの分野では、事業計画の策定、課題の解決、目標達成に向けたプロセスを整理・共有する際に活用されます。
フレームワークを使用することで、複雑な課題を分解し、誰もが理解しやすい形で共有できるため、チーム内での合意形成がスムーズに進むでしょう。
例えば、事業戦略を立案する際には「SWOT分析」や「バリューチェーン分析」、課題解決では「PDCAサイクル」などが代表的なフレームワークです。フレームワークを活用すると、プロジェクトの効率化や成果向上を実現できます。
フレームワークを活用する3つのメリット
フレームワークを活用すると、情報やアイデアを整理してプロジェクトを効率的に進めることが可能です。視覚的にわかりやすい形で共有ができ、抜け漏れの防止にも役立ちます。
ここでは、フレームワークを活用することで得られる3つの主要なメリットを解説します。
下記にて、それぞれ詳しく解説します。
アイデアを効率的に整理できる
フレームワークを活用すると、多くの情報やアイデアを効率的に整理できます。フレームワークにはあらかじめ定められた形式があるため、情報を形式に当てはめていくだけで、全体像を分かりやすくまとめることが可能です。
例えば、事業計画を立てる際に「SWOT分析」を使うと、強みや弱み、外部環境の機会や脅威をそれぞれ明確に分けて整理できます。複雑な情報でもフレームワークに沿ってまとめることで、課題の本質や重要なポイントを見逃すことなく効率的に把握できるのがフレームワークを活用するメリットです。
結果として、計画の精度を高め、実行の段階でもスムーズに進められるでしょう。
見やすく振り返りやすい
フレームワークは視覚的にわかりやすい形で情報を整理できるため、記録として残しやすく、振り返りの際にも役立ちます。図や表形式でまとめられるため、内容を一目で確認でき、複数人での情報共有や意思決定の際にもスムーズに進めることが可能です。
また、プロジェクトの進捗を確認する際や問題点を洗い出す際にも、フレームワークを基に作成した資料があれば効率的です。例えば「PDCAサイクル」を活用すれば、計画(Plan)、実行(Do)、確認(Check)、改善(Act)の各段階での振り返りが容易になり、継続的な改善につなげられます。
見やすさがプロジェクト全体の円滑な進行を支えます。
情報の抜け漏れを抑えられる
フレームワークを利用すると、情報の抜け漏れを最小限に抑えられます。フレームワークには構造が決まっているため、項目ごとに必要な情報を埋めるだけで、重要な要素を網羅できる仕組みが備わっています。
例えば、「バリューチェーン分析」を使用すれば、企業活動を主要活動と支援活動に分け、それぞれの中で価値を生み出す要素を徹底的に洗い出すことが可能です。フレームワークを活用すれば、漏れが発生しやすい複雑なプロジェクトでも助けを借りることで、必要な情報を漏れなく整理し、最適な意思決定を支援します。
新規事業の計画に使えるフレームワーク24選
新規事業の計画を効果的に進めるためには、複雑な情報を整理し、戦略を構築するためのフレームワークが役立ちます。それぞれのフレームワークには独自の特徴があり、適切に活用するとアイデアの具体化や課題解決の精度を高めることが可能です。
ここでは、新規事業に役立つ24のフレームワークを詳しく解説します。
フレームワーク名 | 特徴 |
---|---|
マンダラート | 目標を中心に置き、関連するアイデアや要素を整理して発想を広げるフレームワーク |
SCAMPER(スキャンパー)法 | アイデアを出す際に「代替」「結合」など7つの視点で発想を広げる手法 |
6W3H | 「誰が」「何を」など6Wと「どのように」など3Hで物事を多角的に分析する |
リーンキャンバス | スタートアップ向けに設計された、事業モデルを視覚化するフレームワーク |
PEST分析 | 政治、経済、社会、技術の4つの外部環境要因を分析して市場を理解する |
ペルソナ分析 | 架空の顧客像を設定し、その行動やニーズを基にサービスを設計する手法 |
ポジショニングマップ | 市場内での競合や自社の位置付けを2軸で可視化して戦略を考える |
3C分析 | 顧客、競合、自社を分析し、競争優位性を見つけるためのフレームワーク |
VRIO分析 | 価値、希少性、模倣困難性、組織を基準に自社の強みを評価する手法 |
アドバンテージマトリクス | 製品の独自性と市場規模を基に、競争優位性を分析するフレームワーク |
STP分析 | セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの手順で市場を分析する |
SWOT分析・クロスSWOT分析 | 強み・弱み・機会・脅威を分析し、戦略を導く手法。クロスSWOTは要素の掛け合わせも考慮 |
4C分析 | 顧客価値、コスト、利便性、コミュニケーションを重視してマーケティングを考える |
4P分析 | 製品、価格、流通、プロモーションの観点からマーケティング戦略を検討する |
カスタマージャーニーマップ | 顧客が製品やサービスに触れるプロセスを時系列で可視化する手法 |
AIDMA(アイドマ) | 消費者の購買プロセスを「注意→関心→欲求→記憶→行動」で示すモデル |
AISAS(アイサス) | 消費者の購買行動プロセスを説明する代表的モデル |
5フォース(ファイブフォース・5F)分析 | 競争要因を5つに分類し、業界の収益構造を分析する手法 |
ビジネスモデルキャンバス | 事業モデルを9つの要素で整理し、全体像を視覚化するツール |
RFM分析 | 顧客の購買履歴を基に、最近性、頻度、金額で顧客価値を評価する手法 |
アンゾフの成長マトリクス | 市場と製品の新規性を基に、成長戦略を4象限で考えるフレームワーク |
PLC(プロダクトライフサイクル) | 製品の導入期から成熟期、衰退期までの各段階を分析する手法 |
ECRS(イクルス) | 排除、結合、交換、簡素化の観点で業務改善を進める方法 |
ロジックツリー | 問題や課題を階層的に分解し、原因や解決策を導き出す手法 |
活用方法も合わせて解説しますので、参考にしてください。
マンダラート
マンダラートは、アイデアを広げたり整理したりするためのフレームワークです。9×9の合計81マス目にメインテーマ・要素などを書き込むことで、アイデアの創出や目標達成に役立ちます。
目標を達成することで要素を実現し、8つの要素を達成することでメインテーマを実現するのが基本的な考え方です。新規事業のアイデア出しにも役立ち、市場調査によるテーマの洗い出した他部署との連携などを設定すると、それぞれの部門で新たなアイデアを創出が可能です。
SCAMPER(スキャンパー)法
SCAMPER法は、既存のアイデアを発展させるための発想法です。「代用する(Substitute)」「結合する(Combine)」「適応する(Adapt)」などの7つのアプローチで、アイデアを構築・改善していきます。
SCAMPER法は、既存の製品やサービスを見直し、新たな価値を生み出すのに最適です。例えば、既存のサービスに新たな要素を組み合わせることで、競争優位を確立するアイデアを生み出せます。
一人よりも幅広い年代や役職等、囚われない多様なメンバーで意見を出し合うと、さらに効果的なフレームワークとなります。
6W3H
6W3Hは、事業計画を具体的に構築する際に使われるフレームワークです。「Who(誰に)」「What(何を)」「Where(どこで)」などの6つの「W」と、「How(どうやって)」「How much(いくらで)」「How long(どのくらいで)」の3つの「H」を使って情報を整理します。
6W3Hを活用することで、新規事業のターゲットや提供価値、運営体制を明確化できます。例えば、新規サービスの提供方法を検討する際、顧客層(Who)や提供場所(Where)、価格設定(How much)を具体的に落とし込むことが可能です。
リーンキャンバス
リーンキャンバスは、ビジネスモデルを9つの要素に分けて考えるのが特徴です。顧客セグメント、問題、解決策、収益モデルなどを1枚のキャンバスに記入でき、検証・改善するうえで役立ちます。
リーンキャンバスは、スタートアップや新規プロジェクトで迅速にビジネスプランを立案する際に活用されるケースが多いです。例えば、ターゲット市場とその課題を明確にし、提供価値を設計することで事業の方向性を短時間で可視化できます。
PEST分析
PEST分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの視点から外部環境を分析するフレームワークです。新規事業において、市場や事業環境の変化を把握するために役立ちます。
例えば、新しいサービスを開始する際には、規制の変化(政治)、経済状況の影響(経済)、顧客の価値観や行動の変化(社会)、新技術のトレンド(技術)をそれぞれ検討。PEST分析を通じて、外部要因による機会やリスクを明確にし、戦略の方向性を調整できます。
新規事業の検討や既存事業の見直し、M&Aにも活用されます。
ペルソナ分析
ペルソナ分析は、ターゲット顧客を具体的にイメージし、その特性を詳細に描き出すフレームワークです。年齢、職業、価値観、ライフスタイルなどの情報を設定し、仮想の顧客像を作成します。
ペルソナ分析を活用することで、顧客が求める価値を明確にし、新規事業の方向性を具体化できます。例えば、新しいアプリを開発する場合、ターゲット顧客の1日の行動パターンを想定し、アプリの機能やデザインを設計する際の参考にすることが可能です。
顧客中心のアプローチが、新規事業の成功率を高める鍵となります。WebサイトやSNSだけでなく、インタビュー等対面でのデータも収集すると、より精度の高いペルソナを作成できます。
ポジショニングマップ
ポジショニングマップは、競合との位置関係を視覚的に整理するフレームワークです。市場における自社や競合の製品・サービスを、2つの軸(例:価格と品質)でマッピングします。
ポジショニングマップを活用すると、自社の立ち位置や差別化ポイントを明確にできます。例えば、低価格・高品質を狙う市場での戦略を立てる際に、競合と比較しながら適切なポジショニングを見つけることが可能です。
マップとして配置すると、市場の全体像や参入各社の製品の立ち位置が視覚的に確認しやすくなります。
3C分析
3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの観点から事業環境を分析するフレームワークです。新規事業の立ち上げでは、顧客ニーズ、競合の強み・弱み、自社のリソースを把握し、成功に繋がる戦略を立案するために使用されます。
例えば、ターゲット顧客のニーズを詳細に調べ、競合と比較しながら自社が提供できる独自の価値を明確化するプロセスに活用できます。3C分析は、事業戦略を包括的に設計するための出発点です。
3C分析を成功させるには、客観的なデータに基づく分析、定期的な更新、多角的な視点の導入が必要です。
VRIO分析
VRIO分析は、自社の持つ資源や能力を価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織活用可能性(Organization)の4つの視点から評価するフレームワークです。VRIO分析は、自社の競争優位性を測るために活用されます。
例えば、特許技術や独自のノウハウが競合にとって模倣困難であり、組織全体で活用できるかを分析します。新規事業において、どのリソースを活用するべきかの優先順位を決めるために役立つのが特徴です。
その他、経営戦略の作成や見直し、競争優位性の確保にも役立つフレームワークです。
アドバンテージマトリクス
アドバンテージマトリクスは、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が考案した、業界の競争環境を分析する手法です。「競争優位性の強さ」と「市場の魅力度」を2軸に取り、各事業のポジションをマッピングします。
アドバンテージマトリクスを活用すると、どの事業に注力すべきか、あるいは撤退すべきかの判断材料を得られます。例えば、「競争優位性が高く市場魅力度も高い事業はリソースを集中させ、逆に競争優位性が低く市場の魅力度も低い事業は縮小または撤退を検討する」という意思決定が可能です。
事業環境の変化が激しい中で競争力を維持・強化する際に役立ちます。
STP分析
STP分析は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つのステップを通じて、事業の方向性を定めるフレームワークです。まず、顧客を特定の基準でグループ分けし、その中から自社が狙うターゲット層を選定してください。
最後に、競合との差別化ポイントを明確にし、顧客に伝えるメッセージを整理します。STP分析を活用すると、明確なターゲット戦略を立てられるため、新規事業のマーケティング戦略を具体化する際に役立ちます。
SWOT分析・クロスSWOT分析
SWOT分析は、自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を整理するフレームワークです。
クロスSWOT分析では、SWOT分析の結果を組み合わせて具体的な戦略を導き出します。例えば、「自社の強み」を「外部の機会」と組み合わせて、どう事業を展開するかを検討します。
新規事業の計画段階で、リスクと機会のバランスを見極め、実現可能性の高い戦略を構築するために活用可能です。
4C分析
4C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、チャネル(Channel)、自社(Company)の4つの視点で事業を分析するフレームワークです。マーケティング戦略を立案する際に役立ちます。
例えば、顧客のニーズを深掘りし、競合のポジションを把握したうえで、どのチャネルを通じて自社の商品を届けるべきかを具体的に検討します。
顧客ニーズに沿った価格設定や利便性を提供すると、競争優位性を獲得可能です。
4P分析
4P分析は、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの視点からマーケティング戦略を立てるフレームワークです。新規事業においては、製品の特徴や価格設定、流通方法を明確にし、効果的なプロモーション計画を立案する際に活用されます。
例えば、新商品を市場に投入する場合、適切なターゲット層にリーチするためのプロモーション施策を構築するための指針となります。4C分析と4P分析を組み合わせて、顧客と企業側の両方の視点から分析を行うのが理想です。
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを認知してから購入・利用するまでの一連のプロセスを可視化するフレームワークです。顧客の視点から行動や感情を分析することで、満足度向上や購買率アップのための改善点を見つけられます。
カスタマージャーニーマップを活用する際は、顧客の行動を段階ごとに分けて記録します。例えば、特定の段階で顧客が離脱している場合、その原因を分析して具体的な改善策を導くことが可能です。
新規事業では、顧客体験の最適化に欠かせないツールです。運用フェーズに入ってからも、定期的な見直しをするとよいでしょう。
AIDMA(アイドマ)
AIDMAは、顧客が購買に至るまでの心理的プロセスを表すフレームワークです。「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の5段階で構成されています。
AIDMAは、マーケティングや広告戦略の設計時に役立ちます。例えば、新商品を認知してもらうためのプロモーションを設計する際、「注意」や「興味」を引く方法に重点を置くことで、効果的な施策を立案できるのが特徴です。
新規事業では、顧客の購買心理を理解し、適切なアプローチを計画するのに有効です。
AISAS(アイサス)
AISASは、消費者の購買行動プロセスを説明する代表的モデルです。「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」のプロセスから成ります。
AISASは、デジタルマーケティング戦略を立てる際に有用です。例えば、顧客が商品を検索する段階でのSEO対策や、購入後の口コミ拡散を促進するための施策を設計する際に活用できます。
AISASを活用すれば、Web上で消費者が商品・サービスを認知して購買へ至るプロセスを正確に把握できます。
5フォース(ファイブフォース・5F)分析
5フォース分析は、業界内の競争構造を分析するフレームワークです。「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「既存競争相手の強度」の5つの要素を評価します。
5フォース分析を活用することで、事業環境の競争力を評価し、新規参入のリスクや戦略の優位性を把握できます。例えば、新規市場で競合優位を築く際に、買い手や売り手の影響力を考慮して最適な配分などを立案可能です。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは、事業の全体像を1枚のキャンバスに可視化するフレームワークです。「顧客セグメント」「提供価値」「チャネル」など9つの要素で構成され、簡潔に事業モデルを設計・共有できます。
ビジネスモデルキャンバスは新規事業の計画段階で、複雑なアイデアを整理し、関係者間で共有するのに最適です。例えば、顧客ニーズと提供価値の整合性を確認し、収益モデルを具体化するために活用できます。
RFM分析
RFM分析は、顧客の購買行動を「Recency(最新の購買日)」「Frequency(購買頻度)」「Monetary(購買金額)」の3つの指標で評価するフレームワークです。RFM分析を用いると、優良顧客の特定や離反リスクの高い顧客への対策が可能になります。
例えば、新規事業でターゲット顧客を効率的に絞り込む際に活用することで、マーケティング施策の精度を向上させられます。
アンゾフの成長マトリクス
アンゾフの成長マトリクスは、既存市場・新規市場、既存製品・新製品の組み合わせで成長戦略を検討するフレームワークです。「市場浸透」「製品開発」「市場開拓」「多角化」の4つの戦略が示されています。
新規事業の方向性を考える際、既存資源を活用するか、新たな市場や製品を開拓するかを明確にできるため、リスクを抑えた戦略を選定できます。
新規参入の大きな成長チャンスが見込めるのが大きな特徴です。
PLC(プロダクトライフサイクル)
PLC(プロダクトライフサイクル)は、製品やサービスの寿命を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階に分けて分析するフレームワークです。各段階での戦略を検討することで、事業の最適なタイミングやリソース配分を明確にできます。
例えば、新規事業の市場投入時に適切なマーケティング戦略を選ぶ指針となります。最適なマーケティング戦略によって利益を最大化できるのがメリットです。
ECRS(イクルス)
ECRSは、「排除(Eliminate)」「統合(Combine)」「交換(Rearrange)」「簡素化(Simplify)」の4つの視点で業務を見直すフレームワークです。業務効率を向上させ、新規事業でのリソース最適化を図る際に活用できます。
例えば、プロセスを削減したり、簡素化することで、コスト削減や迅速なサービス提供が実現可能です。4つの原則を順序通りに検討していくことで、現在の業務プロセスを客観的に見直せます。
ロジックツリー
ロジックツリーは、問題を階層的に分解して整理するフレームワークです。「なぜ?」「どうやって?」といった質問を繰り返し、課題の本質を探ります。
新規事業の課題解決や意思決定プロセスの効率化に役立つフレームワークです。例えば、新規事業の顧客ニーズを掘り下げ、適切な解決策を構築する際に活用できます。
多くの視点から根本的な原因を発見しやすいのが特徴です。
フレームワーク活用でアイデアを整理する際のポイント3つ
フレームワークを使って新規事業のアイデアを整理する際には、効率的に進めるためのポイントを押さえておくことが重要です。ここでは、それぞれの具体的なポイントについて解説します。
複数のフレームワークを適切に使い分けることや、目的を見失わない姿勢、客観的な視点が成功の鍵です。
複数のフレームワークを活用する
1つのフレームワークですべての課題を解決するのは難しいため、複数のフレームワークを組み合わせて活用することが効果的です。例えば、「SWOT分析」で企業の現状を把握した後に、「ビジネスモデルキャンバス」で事業の全体像を描くといった使い方が挙げられます。
フレームワークごとに得意とする視点や目的が異なるため、行き詰まった際には別のフレームワークを試してみるとよいでしょう。また、複数の視点から情報を整理すると課題を多角的に分析でき、より実現可能性の高いアイデアを生み出すことが可能です。
柔軟にフレームワークを使い分けることを意識しましょう。
フレームワークの完成は目的ではないことを理解する
フレームワークは、アイデアや情報を整理するためのツールであり、完成させること自体が目的ではありません。フレームワークを埋める作業に固執しすぎると、本来の目的である新規事業の立案や課題解決のための創造的な活動がおろそかになる可能性があります。
フレームワークを利用する際には、「何を明確にするために使うのか」を意識し、必要な範囲で柔軟に運用することが重要です。新たなアイデアや方向性を見つけられれば、フレームワークを完全に埋める必要はないと考えましょう。
客観的な視点で検討する
フレームワークを活用する際には、主観に偏らず客観的な視点で情報を整理することが求められます。市場や顧客のニーズを調査したデータや、競合他社の動向を分析した結果を基に検討を進めることで、現実的かつ実現可能なアイデアを導き出せます。
特に、新規事業においては自社の強みだけに頼るのではなく、顧客が求めている価値を正確に理解することが成功の鍵です。フレームワークを作成した後も、データやフィードバックを基に定期的に見直しを行い、現実に即したアイデアの構築を心がけましょう。
新規事業に役立つ知識やフレームワークが学べる本
新規事業の成功には、アイデアを効率的に整理して実現可能な計画を立てるための知識やツールが欠かせません。ここでは、新規事業の立ち上げに役立つ3冊のおすすめ書籍を紹介します。
事業構想を学びたい人におすすめの本です。
ビジネスフレームワーク図鑑 すぐ使える問題解決・アイデア発想ツール70
「ビジネスフレームワーク図鑑」は、問題解決やアイデア発想に役立つ70種類のフレームワークをわかりやすく解説した一冊です。各フレームワークの目的や活用方法が図解付きで説明されており、初心者でもすぐに活用できます。
SWOT分析やバリューチェーン等の定番から、「AARRRモデル」など最新のものまで幅広い種類が網羅されています。また、業種や目的に応じた活用事例も掲載されており、実践に結びつけやすい内容です。
「ビジネスフレームワーク図鑑」を手元に置けば、思考整理やチームでのアイデア共有がスムーズに進み、新規事業の立ち上げを効率化できます。
問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション
「問いのデザイン」は、対話を通じて創造的なアイデアを引き出す方法に特化した本です。新規事業の立ち上げでは、効果的なコミュニケーションが成功の鍵となりますが、「良い問い」の作り方と活用法を詳しく解説しています。
具体的には、課題発見やチームの合意形成に役立つ問いの設計プロセスや、対話を活性化させるファシリテーションの方法が紹介されています。また、実例を交えた解説が多く、実務に直結する知識が得られるのがこの本のポイントです。
新規事業の初期段階で、チームの思考を深めたり方向性を明確にしたりする際に非常に役立つ一冊です。
リーン・スタートアップ
「リーン・スタートアップ」は、新規事業を効率的に立ち上げ、成功に導くための実践的な手法を紹介しています。無駄を省きつつ仮説検証を繰り返すアプローチが中心となり、迅速かつ低コストで事業を展開する方法が解説されています。
特に、最小限の機能を持つ製品を市場に投入し、顧客からのフィードバックを元に改善を進める「MVP(実用最小限の製品)」の概念が有名です。新規事業で多くのリソースを割けない場合でも、この方法を使えばリスクを抑えながら市場適応性の高いプロダクトを開発できます。
スタートアップだけでなく、大企業の新規プロジェクトにも応用可能な内容です。
新規事業の立ち上げに関するよくある質問
最後に、新規事業の立ち上げに関するよくある質問に回答していきます。
気になる疑問に回答していきますので、参考にしてください。
新規事業が思いつかない原因は?
新規事業が思いつかない主な原因には、視野の狭さや情報収集不足、既存の思考パターンへの依存が挙げられます。日常業務に追われていると、新たなアイデアを考える時間や余裕がなくなり、現状維持が優先されがちです。
また、市場や顧客のニーズについて十分な情報を持たない場合、適切な課題設定ができず、結果として具体的なアイデアに繋がらないことがあります。
その他、社内文化や環境も新規事業が思いつかない原因です。リスクを避ける風潮が強い場合、創造的なアイデアを発言しづらくなることもあります。
このような状況を打破するためには、市場調査や競合分析を徹底し、外部視点を取り入れることが重要です。異業種の成功事例を学ぶことや、アイデア創出を促進するフレームワークの活用も検討しましょう。
新規事業創出に必要なスキルは?
新規事業を成功させるには、幅広いスキルが求められます。まず必要なのがリーダーシップです。新規事業の立ち上げにはチームをまとめ、方向性を示す能力が不可欠です。
その他、情報収集力も重要です。市場や競合、顧客ニーズを正確に把握すると、的確な戦略を立てられます。
マネジメント力が高ければ、リソースの配分や進捗管理を適切に行い、プロジェクトを効率よく進められます。応用力や柔軟な発想力も新規事業創出に必要です。変化する市場環境に対応し、新たなチャンスを見つける力が求められます。
上記のようなスキルをバランスよく備えることが、新規事業創出の成功の鍵です。
新規事業の成功率は?
新規事業の成功率、収益化まで達する事業の割合は約14%※とされています。この低い成功率の背景には、経営資源の不足、人材やノウハウの不足、マーケティングの失敗などが挙げられます。これらの要因により、良いアイデアがあっても収益化に至らないケースが多いのが現状です。
成功率を高めるためには、事前の情報収集と整理が不可欠です。市場や顧客ニーズを正確に把握し、それを元に具体的な事業計画を立てましょう。
また、事業を支えるための適切なサポート体制を整備することも成功の鍵となります。例えば、新規事業コンサルの活用や、リスク管理を徹底する仕組みを導入することが効果的です。
目的に合うフレームワークを活用し新規事業を成功させよう
新規事業の立ち上げには、計画を効率的に進めるためのフレームワークを活用することが欠かせません。本記事では、アイデア整理から事業計画の立案、実行フェーズに至るまで役立つフレームワークを紹介しました。
それぞれのフレームワークには独自の強みがあり、目的や状況に応じて使い分けることで、プロジェクトの成功率を高めることが可能です。
適切なフレームワークを選び、柔軟に組み合わせて活用することで新規事業の計画がより具体的かつ実現可能なものになります。本記事で紹介したツールを活用して、持続的な成長に繋がる事業を立ち上げましょう。