コンサルティングファームは、新卒・転職市場で共に上位にランクインするほど人気の高い業界です。
一方で離職率が高く、人の出入りが激しいのもコンサルティング業界の特徴の1つです。
コンサルティングファームに就職して、本当にやっていけるのかわからず、一歩が踏み出せない方も多いでしょう。
今回は、コンサルティングファームに新卒で入社することのメリット・デメリット両方の観点から分析してみました。
本記事の結論をお伝えすると、
- 早期のスキルアップが可能
- 一般的な事業会社ではできない経験が若いうちに経験できる
- 若いうちに年収アップ・昇格が可能
- 独特の文化に早く馴染める
- 激務・長時間労働を強いられる可能性がある
- クライアントへの提案内容が机上の空論に偏りがち
- 異業界への転職時に年収ダウンとなる可能性が高い
- 社内の「便利屋」的ポジションに陥ってしまう可能性がある
上記のようなメリットとデメリットがあります。
本記事では、一つ一つ詳しく解説しますので、新卒でコンサルティングファームを目指すことに不安を感じる方はぜひ参考にしてみてください。
新卒採用でコンサルに入社するメリット
まずは新卒入社のメリットを見ていきましょう。
新卒市場においてコンサルティングファームが人気となる理由、またコンサルティングファームで得られる経験からそのメリットを考えてみました。
早期のスキルアップが可能
「コンサルティングファームの1年は一般の事業会社の3年に相当する」と言われるほどコンサルティングファームにおけるビジネスのサイクルは速く、コンサルタントに求められる仕事のスピードや品質は非常に高いです。
また、コンサルタントとして実際の仕事で相対するクライアントは、管理職、中でも部長クラス以上が多く、若手のうちから自分よりも経験が何十年もある、親世代に近い年代の方々と対等に仕事をする場面が多々あります。
そのため、例え1年目であっても「プロフェッショナル」であることが求められ、そんな環境に、伸びしろの幅が大きい(むしろ伸びしろしかない)新卒の時から身を置くことで早期のスキルアップが可能です。
加えて、コンサルティングファームには様々なバックグラウンドを持つ大変優秀な上司や先輩社員が多く、そんな彼ら・彼女らと共に働くこともスキルアップに繋がります。
一般的な事業会社ではできない経験が若いうちに経験できる
コンサルタントが仕事で相対するクライアントの多くは、企業の管理職、特に部長以上であることが多いです。
若手のうちからクライアント企業の部長や執行役員、時には社長が出席する会議でプレゼンを行ったり、自身が作成した資料に対してコメントを受けたり等、一般的な事業会社では主任や課長になってから経験するようなことを入社の早い段階から経験することができます。
新卒で入社することで、そういった経験が社会人1年目からできる可能性が高く、事業会社にはないコンサルティングファームにおける魅力の1つと言えます。
若いうちに年収アップ・昇格が可能
コンサルティング業界は給与レンジが高いことが有名で、それは新卒社員も例に漏れません。
一般的に新卒の年収は400万円以上のコンサルティングファームが多いです。
コンサルティングファームの多くは実力・成果主義であり、実力があれば早期に年収アップ・昇格が可能です。
早いところでは新卒入社から5年目、20代後半にはマネージャー(管理職)になり、年収が800万円代以上、30歳で1,000万円オーバーというケースもあります。
仕事の面白さ、やりがいももちろんコンサルタントとの魅力ですが、やはり高収入というのも非常に重要なポイントです。
独特の文化に早く馴染める
メリットの最後、4点目は少し別の視点でお話ししましょう。
コンサルティング業界というのは、他の業界とは一線を画す独特な文化があります。
仕事は基本的にプロジェクトベースで動くため、プロジェクトに充てた作業時間をプロジェクトに「チャージする」という考え方があったり、1人1人がどのプロジェクトにどのくらい稼働をしているかという「稼働率(チャージャビリティ)」が評価指標の1つとなっていたり、働き方1つをとっても一般的な事業会社と大きく異なります。
加えて、社内の成果物レビューでとにかくロジカルであることを求められたり、年次関係なく実力主義であること等、その独特の文化に事業会社から転職で入社した人は前職との違いに戸惑い、なかなか適応できないため実力が発揮できず、数年で退社してしまうケースが少なからずあります。
一方で最大の強みとも言える「実務経験がないこと」を持つ新卒入社のコンサルタントは、比較する対象の前職がないため「社会・会社とはこういうもの」という一種の割り切りができ、ギャップに苦しむことなく働くことができる人が多いです。
コンサルティングファームでは自分より年齢も職位も上の転職入社の人に対して新卒入社数年目のコンサルタントが作業指示をしたり、資料レビューをしている構図は珍しくありません。
これは、文化により早く馴染みやすいという新卒入社のメリットの表れです。
新卒採用でコンサルに入社するデメリット
新卒でコンサルティングファーム入社はいいことばかりではなく、もちろんデメリットもあります。
コンサルティングファームでは、新卒入社後3年以内に退職する人の数は多く、ファームによっては50%近くにのぼります(ただ、最近は退職防止に力を注いでいるファームも多く、状況は変化しています)。
退職を選択する人の理由から、コンサルティングファームに新卒で入社することのデメリットを考えてみました。
激務・長時間労働を強いられる可能性がある
「コンサルティングファーム=激務」というイメージが強いですが、やはり事業会社と比較すると忙しく、勤務時間が長い傾向にあります。
コンサルティングファームはどこも「顧客第一」という考えが強く、顧客満足のため、またよりよい成果物のため、終電後の残業や休日出勤が発生することが度々あります。
若手のうちは作業者としてプロジェクトに従事することが多く、仕事に慣れないうちは膨大な作業にひたすら追われ、日々早朝出勤、終電過ぎまで残業という経験は新卒でコンサルティングファームに入社した方の多くが経験しています。
ワークライフバランスが謳われる昨今では状況は改善しつつありますが、コンサルティングファームにおける長時間労働は慢性的なものがあり、長時間労働から身体を壊し、そのまま退職、という最悪ケースはいまだ完全には解消していません。
クライアントへの提案内容が机上の空論に偏りがち
新卒で入社したコンサルタントの決定的な欠点とも言えるのが、事業会社での経験がないことです。
コンサルティングファームのクライアントはほぼ100%が事業会社ですが、その事業会社での経験があるかないかで、クライアントと同じ立場で考えることができるかどうかに大きく関わってきます。
コンサルタントの仕事の多くはクライアントの課題分析、解決策の提案・実行であり、課題を把握するにしても、クライアントにとって実行可能性の高い解決策を提案するにしても、クライアントをいかに理解しているかが重要になります。
コンサルティングファームに新卒で入社した場合、良くも悪くもコンサルティングファームでの経験しかないため一般的な事業会社の実態がわかりません。
クライアントからのヒアリング等を通じて把握することはできますが、それはあくまでも他者から聞いた情報であり自らが経験して理解したことではないため、通り一遍的な理解で留まってしまいます。
事業会社の経験が乏しいために、クライアントに対して実態にそぐわない机上の空論的な解決策の提案しかできなかったり、クライアントから「全然うちのことをわかっていない」「あの人が言うのは上っ面なことばかり」と、満足してもらえないことは、新卒で入社したコンサルタントが直面する困難の1つです。
異業界への転職時に年収ダウンとなる可能性が高い
「年収が高い」というメリットの裏返しにもなりますが、新卒でコンサルティングファームに入社した場合、同年代と比較して年収が高い傾向にあるため、転職の際には年収がダウンとなる可能性が高いです。
同業界への転職の場合は年収維持、またはアップが可能ですが、異業界・事業会社への転職の場合はほぼ確実に年収がダウンとなり、コンサルタント時代の年収レンジに戻るまで数年かかります。
特に、新卒で入社し、若手の段階で事業会社に転職する場合は、コンサルタントとしての経験が十分になく、また事業会社の経験がないことから、事業会社からの転職者よりも経験が浅いとみなされ、年収が低く設定されることがあります。
通常、転職では年収アップを狙っての転職が多いですが、この年収ダウンは平均年収が高いコンサルティングファームならではのデメリットです。
社内の「便利屋」的ポジションに陥ってしまう可能性がある
デメリットの最後、4点目は実は新卒入社で多くの方が悩みがちな点です。
コンサルティングファームのうち、新卒を多く採用しているところでも転職組と新卒組の割合は1:1程度となっており、ファームによっては転職組が新卒組の半分以上ところもあります。
転職でコンサルティングファームに入社してくる方は、基本的に前職に基づくスキルを武器に入社するため、その強みを生かしたプロジェクトへのアサイン、また役割が設定されます。
一方で実務経験がない、もしくは乏しい新卒入社の場合はいわゆるジェネラリストとして人手が足りないプロジェクトに次から次へとアサインされたり、プロジェクトの中で様々な庶務担当となることが少なからずあります。
コンサルティングファームは事業会社と比較して転職組の割合が高いため、新卒1人1人へのそういったしわ寄せが多くなりがちです。
また、コンサルティングファームは明確に営業職や一般職、といった職種が存在しないファームが多いため、受注活動や契約手続き、またプロジェクトを運営する上での様々な庶務を全てコンサルタントが分担して実施しています。
大量の印刷、プロジェクトメンバーのメーリングリスト作成、時には座席表作成等といった庶務が発生する度に、そのほとんどが新卒入社に割り当てられます。
庶務といっても数は相当数あり、こなすことだけでも精一杯というケースが非常に多いです。
新卒でコンサルティングファームに入社したものの、庶務をこなすだけで日々が過ぎてしまい、数年経ってもスキルやスペシャリティが身につかず、結局何年経っても庶務係、というコンサルタントは少なくありません。
新卒でコンサルティングファームに入社する方は非常に地頭がよく、機転が利く方が多いのですが、それが逆にあだとなってしまい「使い勝手のいい新卒」として、庶務がどんどん割り当てられてしまう、そんなデメリットが潜んでいます。
>>【コンサルやめとけ!】 入社して後悔した事と辞める人の特徴・理由
新卒コンサルタントの離職率は高い
コンサルティングファームで働く場合、長時間労働で激務なことが多く、実際に対応する業務が調査や分析をしたり、資料をまとめたりと地味な作業ばかりで「思っていたのと違う」と感じる人も多いです。
実際、コンサルティングファームの離職率は20%程度といわれており、就職しても激務で体調を崩したり、入社後のギャップなどにより5人に1人は転職してしまっています。
令和2年の一般労働者の離職率が10.7%(厚生労働省 令和2年雇用調査結果の概要より)であることから、離職率はかなり高いことがわかるでしょう。
しかし、逆にそういった環境の中で働き続けていくことができれば、コンサルティングファームで経験できることは多く、スキルアップや年収アップを目指しやすいともいえます。
また、他の職種に転職する場合でもコンサルでの経験は自身のキャリアにとってプラスに働きます。
さらにコンサルでのスキルを身に着ければ将来的にフリーランスのコンサルタントとして独立し、自由度高く働くことも可能となる為、大変だからこそ将来の可能性は大きいということも覚えておきましょう。
新卒採用でおすすめコンサルランキング
今やコンサルティングファームは大小合わせて数百社以上あるともいわれています。
新卒でコンサルティングファームを目指す場合、どこの企業を目指せばよいか分からない方も多いでしょう。
本章では新卒採用でおすすめのコンサルティングファームをランキング形式で解説します。
1位:野村総合研究所
野村総合研究所のコンサルティングファームとしての強みは、領域の広さです。
自動車から始まり、エレクトロニクス、医療、地方自治体まで幅広い領域をカバーしています。
コンサルティング領域が限定的なコンサルティングファームも多い中で、野村総合研究所はさまざまな分野で力を発揮しているといえるでしょう。
1つの分野だけではなく、幅広い分野で知識と経験を積みたい方にはおすすめのコンサルティングファームです。
2位:アビームコンサルティング
アビームコンサルティングのコンサルティングファームとしておすすめできる点は2点あります。
1点目はグローバルな環境です。
アビームコンサルティングは海外に拠点を持ち、ビジネスを展開しています。
グローバルな環境で経験を積みたい方にはおすすめです。
2点目はクライアントとの長期的な関係性です。
アビームコンサルティングでは短期的な利益ではなく、クライアントの真の利益となるような長期的な視点でビジネスに取り組みます。
短期的ではなく、長期的な視点からクライアントに携わり、問題解決を図りたい方にはおすすめです。
3位:ベイカレント・コンサルティング
ベイカレント・コンサルティングのおすすめポイントは、トータルでビジネスに携われる点です。
ベイカレント・コンサルティングでは戦略の立案からシステム構築、アウトソーシングまですべてを提供しています。
課題解決に向けた解決策の一部だけを請け負うコンサルティングファームが多い中で、トータルにクライアントに関わります。
クライアントと四つに組んで、仕事に取り組みたい方にはおすすめのコンサルティングファームです。
新卒でコンサルを目指す場合によくある質問
新卒でコンサルタントを目指そうと検討していると、さまざまな疑問が浮かんでくるでしょう。
自身で考えて解決できる例もあれば、中々答えが見つからない例もあります。
本章では新卒でコンサルを目指すうえで、よくある質問について解説します。
新卒入社でコンサルはなぜ難しい?
新卒でコンサルタントを目指そうとネットで検索すると、新卒でコンサルタントは難しいという意見が散見されます。
新卒でコンサルタントが難しいとされる理由は、即戦力性が求められているからです。
コンサルタント業界では年齢に関係なく、実力・成果のみが評価の対象となります。
たとえ新卒であろうと仕事ができなければ、評価はされず、新卒だからと下駄をはかせてもらえることはありません。
コンサルタント業界は実力・成果主義のため、ビジネススキルの低い新卒では厳しいというわけです。
新卒でコンサルを目指す場合にはおすすめの資格は?
新卒採用において、資格は熱意の表れでもあるため、プラス評価の対象になります。
コンサルタントを目指す場合には、どのような資格があれば、よいのか気になる方も多いでしょう。
コンサルタントを目指す場合、以下の資格があるとよいでしょう。
- TOEIC/TOEFLなどの英語資格
- 簿記などの会計系資格
コンサルは新卒ではなく転職で目指した方がよい?
新卒採用でコンサルタントを目指そうとしている点を相談した際に、転職でコンサルタントになることをおすすめされた方もいるでしょう。
新卒ではなく転職で目指すようにいわれる理由は、ビジネススキルや経験の有無が関係します。
コンサルタント業界は年齢に関係なく、成果を出せなければ、新卒であろうと評価の対象にはなりません。
新卒で活躍が難しいのであれば、スキルや経験を積んだ状態で転職した方がコンサルタントとして活躍できる可能性が広がります。
新卒ではなく、転職でコンサルタントを目指すようにいわれる理由は、ビジネススキルや経験が身についているからです。
また、新卒からビジネススキルや経験を身につけるなら長期インターンがおすすめです。
長期インターンシップでは、実際の業務を通じてリアルなビジネス現場を体験することができ、座学だけでは得られない貴重な経験を積むことができます。(関連サイト:Renew)
新卒でコンサルタントになる魅力は大きい
以上、新卒でコンサルティングファームに入社するメリット・デメリット両方を見てきました。
デメリットもありますが、やはりコンサルティングファームでしか成し遂げられないスキルアップ、経験を得られ、年収アップや昇格が早期に実現できることが新卒でコンサルティングファームに入社することの大きな魅力です。
新卒でコンサルティングファームへの入社を考えている方は、デメリットに対して、
- 自分は耐えられるか?
- デメリットを克服するためにはどうすればいいか?
という問いを自分に投げかけ、コンサルタントになることを前向きに検討してみてください。