これまで経営者として、事業をけん引してきた経験がある方でも、転職を余儀なくされる場合があります。
「元経営者として、転職はできるのだろうか?」と不安になる方もいらっしゃると思います。
そこで本記事では、現在、経営者の転職支援に携わっている筆者が、経営者の転職のポイントを解説します。
年間100件以上の上場企業エグゼクティブやファンド投資先企業の経営者の方々を支援してきましたが、結論からいうと、元経営者の方が、他の企業の経営者や社員に転職することは可能です。
この記事では、難しいとされている元経営者の転職の選択肢や転職の方法、おすすめのエージェントなどについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
また、以下の記事で、ハイクラス転職におすすめのエージェントについて詳しく解説しています。ぜひあわせてチェックしてみてください。
経営者や起業経験者の転職は難しい?
ここでは、一般的に経営者の転職が難しいとされている理由について解説します。
転職をスムーズに行うためにも、元経営者という肩書きのデメリットを事前に理解しておきましょう。
プライドが高いイメージから敬遠される
実際に、自分自身がオーナーとして経営をしてきた会社を持っていた経営者は、これまで「自分で会社を運営してきた」という経験に裏打ちされた自信を持つ方が多くいらっしゃいます。
「一般社員」や「雇われ社長」としての転職をするとなると、今までのような振る舞いで仕事をすることは難しいでしょう。
企業側から、「経営者としてのプライドが強すぎる」と思われてしまうと、会社のカルチャーとは合わないと判断されてしまう可能性もあります。
社長としての十分な能力と経験が備わっていたとしても、会社の文化に適応し、既存社員上手く連携できることを示せなければ、転職の成功は遠のいてしまうでしょう。
そうした意味で、対象の企業が求めている人物像をしっかりと理解した上で転職活動をする必要があります。
「元経営者」の肩書きは転職市場で印象がよくない
「元経営者」という肩書が、転職を難しくしてしまうケースがあります。
例えば、書類選考で「元経営者ということは、事業に失敗してしまった過去がある」と思われてしまえば、その時点でお見送りになってしまう可能性があります。
履歴書や職務経歴書などの書類作りにはしっかり時間をかけ、「転職をした場合、対象の企業にどのように貢献し、どのようなメリットを与えられるか」を先方に伝えることができれば良い印象を与えられるでしょう。
また、経営者層への転職を検討している場合には、以下の点に留意する必要があります。
- 対象企業の業界把握と迅速なキャッチアップ
- これまで経営してきた会社との差異を理解する
- 競合情報などを事前に確認
一般職種への転職とは異なり、ビジネス全体を俯瞰する能力と、売上や会社運営にアウトプットできる能力が求められます。
しっかりと企業研究をして応募し、面接に臨みましょう。
経営者の転職の選択肢
経営者の転職に関しては、大きく分けて2つの選択肢があります。
「企業の役員クラスへの転職」と「プロ経営者を目指す」というものです。
それぞれ解説していきます。
企業の役員クラスへの転職
企業の経営を任される役員クラスへの転職であれば、これまで自分自身が経験してきた「経営者」としての経験を存分に活かすことが可能です。
ただし、注意点として、対象の企業に転職後「本当に実力が発揮できるのか」という点が挙げられます。
対象の企業とその業界についてしっかりと把握し、自分が提供できる価値と相手が求めているものを擦り合わせることで、転職のミスマッチングは避けられます。
プロ経営者を目指す
一社にとどまらず複数の企業での経営経験を積み、経営を生業とするプロ経営者を目指すことも可能です。
この場合、経営者としての知識を多角的にインプットし、会社経営にいつでも活用できなければなりません。
経営学修士(MBA)など経営に関する資格や学歴を持ち、多くの企業でプロ経営者として活躍する人材も存在します。
しかし、プロ経営者になることは簡単ではありません。
多くの企業で経営を任せられる人物となるためには、相応の学びに加え、実務経験が必須です。
経営者の転職市場
経営者の転職市場について確認してみましょう。
経営者を外部から求める企業は増加傾向にあります。理由としては、以下の項目などが挙げられます。
- 後継者のいない企業の増加
- スタートアップやベンチャー企業の経営者ニーズの増加
- 海外進出を検討している企業の現地法人経営者のニーズの増加
上記の理由から、多方面で経営人材のニーズが高まっているといえるでしょう。
また、スタートアップやベンチャーでは近年CxOポジションの採用ニーズも増えてきています。
CxO転職については以下の記事で詳しく紹介しているので参考にしてください。
関連記事>>CxOにおすすめの転職エージェント・サイト紹介
経営者からの転職で求められる人物像
経営者から他の企業へ転職する場合、対象の企業における役職や立場などによって求められる人物像が変わってきます。
ここからは、「経営層への転職の場合」と「一般社員への転職の場合」の2つに分けて解説していきます。
経営層への転職の場合
経営者として求められる人物像は、「経営者として一番成熟している状態」です。
経営者の候補として、これまでの実績や高い経営やスキルを持っていることが必須です。また、昨今ではあまり公に言及できなくなってきていますが、年齢も重要です。
いくら経験がある方でも年齢が高いと、経営ポストに参画し活躍できる期間が短くなってしまいます。そうなると、企業にとってのメリットが少なくなる可能性があります。
さらに、スタートアップを自分自身で創業して経営者になった場合は、社会人としてのマナーやコミュニケーションの取り方なども見られます。
企業は常に、会社とのカルチャーフィット、ワンマン経営にならないかなどを気にしていることを忘れてはいけません。
一般社員への転職の場合
元経営者という立場の転職では、いわゆる「社員」や「従業員」としての資質が求められます。
例えば以下のようなことが挙げられます。
- 社内の人間とのコミュニケーション能力
- 会社のビジョン、規則を守って行動する力
- 上司となる人物や他者の意見を柔軟に受け入れる心
- 仕事のデッドラインを守り遂行する能力
- 自発的に創意工夫し、他の社員にシェアしていく力
- 元経営者として、企業にとってプラスになることを常に考える姿勢
これまでの会社を経営する立場から、従業員の立場になると、あたりまえですが自分の一存では全て決めることができません。
適切なタイミングで適切な人員と仕事をし、チームワークを意識してビジネスを進めていくことがとても重要です。
社長や経営者から転職する際のポイント
経営者の場合、選考にあたっても、常に経営者の目線で臨むことがポイントといえます。
ここでは、経営者の転職で、特に重要となる「面接対策」「エージェントの利用」について詳しく解説します。
面接対策を入念に行う
「会社の倒産」、「廃業」、「社員や従業員として再度チャレンジしたい」など、経営者から転職をする理由はさまざま存在します。
その中で、面接では「なぜ廃業したのか?」、「なぜ経営者ではなく社員としてなのか?」などを問われるでしょう。
さらに、「経営者として、これまでどういったスキルを身に着け、どういった実績を残せたのか」という具体的なビジネススキルについても言及されます。
そうした過去の経営に関する質問への回答で、「一般社員として活躍するのは難しそう」「うちの経営は任せられない」などと判断されてしまう可能性もあります。
従って、あらかじめ質問が予想される事項に関しては、よどむことなく説明できるように準備をしておきましょう。
他にも面接準備をする上で押さえておきたいポイントは以下の通りです。
- これまでの経験や実績について臨場感のある説明ができるようにしておく
- 対象の企業がどのような経営を求めているのかの把握に努める
- 対象の企業との面談前には、同社の有価証券報告書を始め、売上や事業の状況を出来る限り公知情報を調査しておく
- 経営者という自身の経験が、対象の企業のどういったところにメリットをもたらせるのかを簡潔に伝えられるようにする
エージェントの利用がおすすめ
経営者が転職をする際は、専門の転職エージェントを活用するのがおすすめです。
経営者の転職を多く斡旋したことのある転職エージェントであれば、経営者転職についてのノウハウやアドバイスを細かく教えてくれます。
元経営者が目指すハイクラスな転職に向けた履歴書や職務経歴書の作成、面接対策などのサポートが受けられるエージェントもあるため、そうしたサービスを活用しながらスムーズに転職活動を進めていきましょう。
経営者の転職におすすめのエージェント
ここからは、経営者が転職をする際に活用すべきエージェントを紹介していきます。
特に最初の2社に関しては、積極的に利用することをおすすめします。
リクルートエグゼクティブエージェント
運営会社 | 株式会社リクルートエグゼクティブエージェント |
公式サイト | https://www.recruit-ex.co.jp/ |
公開求人数 | 非公開(2024年11月14日時点) |
主な求人職種 | IT、製造業、金融、ヘルスケア、コンサルタントなど |
リクルートエグゼクティブは、リクルートグループの中にあるサーチファームです。
新聞の人事情報欄で、経営者交代などの大きな転職を動かしている企業の一つです。
リクルートエグゼクティブには、IT、製造業、ヘルスケア業界での経歴や、MBAや理系修士の資格を持つ、ハイレベルなコンサルタントが所属しています。
大企業から中小企業の経営人材、CxO人材から、ファンドの投資先企業の経営者案件、ベンチャー企業の経営者など経営者に関する案件を豊富に抱えている企業です。
エゴンゼンダー
運営会社 | エゴンゼンダー株式会社 |
公式サイト | https://www.egonzehnder.com/jp |
公開求人数 | 非公開(2024年11月14日) |
主な求人職種 | ヘルスセクター、プライベートキャピタル、テクノロジーなど |
エゴゼンダーは、外資系最強ともいえるサーチファームです。
大手の企業から日本国内に拠点を置く外資系企業のトップマネジメントレベル人材の転職支援を得意としています。
コンサルタントのレベルの高さにも定評があります。
また、経営者の転職支援だけでなく、「CEOアドバイザリー」など独自のビジネスを展開していることでも有名です。
リクルートダイレクトスカウト
運営会社 | 株式会社リクルート |
公式サイト | https://directscout.recruit.co.jp/ |
公開求人数 | 400,408件(2024年11月14日現在) |
主な求人職種 | IT、製造業、ヘルスケア、コンサルタント、金融、エネルギーなど |
リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営するハイキャリア専用の転職登録サイトです。
以前は「キャリアカーバー」という名前で運用されていました。
リクルートのキャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントだけでなく、リクルートエグゼクティブエージェントのコンサルタントもチェックしているサイトです。
経営層への転職を目指す方は、登録をしておくのがおすすめです。
JACリクルートメント
運営会社 | 株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント |
公式サイト | https://www.jac-recruitment.jp/ |
公開求人数 | 21,754件(2024年11月14日現在) |
主な求人職種 | 金融、メーカー、メディカル、ITなど |
JACリクルートメントは、外資系の転職エージェントです。
JACリクルートメントではハイキャリア専門の転職支援部門があるなど、経営者の転職支援にも対応しています。
また、部門もさまざまに分かれていて、幅広い業界に精通している転職エージェントです。
ビズリーチ
運営会社 | 株式会社ビズリーチ |
公式サイト | https://www.bizreach.jp/ |
公開求人数 | 141,262件(2024年11月14日現在) |
主な求人職種 | 金融、メーカー、メディカル、ITなど |
ビズリーチは、株式会社ビズリーチが運営する転職登録サイトです。
ハイクラス求人を多く取り扱うことから、多くの転職支援企業が登録者情報をチェックしています。
経営者やハイクラス転職に強みのある転職エージェントに声をかけてもらうことや、公開情報を検索して積極的に応募することも可能です。
経営者の転職に関する疑問・Q&A
それでは、経営者の転職に関する疑問について、その答えをお伝えします。
企業の経営層である役員の転職は難しい?
結論からいうと、これまでの「経営者としての経験」、「新たな事象についてのキャッチアップ能力」があれば難しくはありません。
また、対象の企業に足りない箇所を補える「スキル」があれば、経営者層への転職も十分可能でしょう。
ただし、転職先企業の理念に共感可能か、企業のカルチャーに馴染めるかどうかが重要となります。
経営者が転職を考える主な理由は?
経営者によって、転職を検討する理由はさまざま考えられますが、例えば「経営していた会社が倒産寸前である」、「廃業してしまった」などが挙げられます。
それ以外にも、「自らの可能性を広げたい」、「ライフワークバランスを考慮したい」など「働く人」として成長、バランス調整などを希望する経営者もいます。
さらには、「プロ経営者として複数社で経営経験をしたい」という考えを持つケースもあるでしょう。
経営者の転職まとめ
今回の記事では経営者が転職をすることについて解説してきました。
以下が今回の記事のまとめです。
- 経営者の転職の難易度について解説
- 経営者が選べる転職先の種類についてご紹介
- 経営者の転職市場について解説
- 経営者からの転職でもとめられる人物像とは?
- 経営層に転職をする場合と一般社員への転職の場合の説明
- 経営者が転職をする際のポイントについて解説
- 経営者が転職をするためのおすすめエージェント5選
- Q&A
経営者はこれまでの経験やスキルを活かした、さまざまな転身の選択肢が考えられます。
本記事を参考にしていただき、転職のご支援になれば幸いです。