日本企業の約半数以上が後継者不在という現実のなか、M&Aは事業承継の手段を超え、企業価値を次の世代へつなぐ社会インフラになりつつあります。
その最前線で経営者に伴走し続けるのが、『株式会社日本M&Aセンター』ダイレクトチャネル グループリーダーの立花勇貴さん。
「ビジネスの総合格闘技」とよばれる難易度が高く厳しいM&A仲介業界で、2025年上期には社内で最も譲渡企業からの受託件数が多いM&Aコンサルタントに贈られる「最多受託賞」を獲得。
異業種からM&A業界に挑戦した理由、経営者に寄り添うプロとしての心構えを伺いました。

株式会社日本M&Aセンター ダイレクトチャネル グループリーダー
立花 勇貴様
新卒で大手SIerへ入社後、営業として数多くのシステム導入提案を経験。
2021年に日本M&Aセンターへ転職後は、譲渡受託営業で新人賞、年間800回の商談数を記録した敢闘賞、成約されたお客様からのアンケートで最高評価を受けたベストクオリティ賞など数多くを受賞。2025年上期には最多受託賞を獲得し、事業承継や成長戦略の課題に向き合う経営者に伴走し続けている。これまでのM&A成約件数は約30件。
──(コンサルGO編集部)まずは、これまでのご経歴と現在のお仕事についてご教示ください。
立花氏:私は新卒で大手SIerに入社し、12年間にわたり中堅企業や大手企業に向けてシステム提案営業を担当してきました。
2021年に日本M&Aセンターへ転職し、現在は譲渡企業の発掘と提携仲介契約を結ぶ業務を行っています。お客様の人生に寄り添う営業スタイルを心がけており、2025年上期には最多受託賞を受賞しました。
M&Aが成約して終わりではなく、譲渡企業と譲受け企業がお互いに価値を高め合うサポートを意識しています。
圧倒的な経験値とサポート体制で、企業の存続と発展を支える

──御社の会社概要、サービス内容および支援のご方針や、企業としてのスタンスについても教えてください。
立花氏:日本M&Aセンターは『M&A業務を通じて企業の「存続と発展」に貢献する』を企業理念として、創業以来累計10,000件を超えるM&A成約実績を有するM&A仲介会社です。
M&A・事業承継の成約実績はNo.1で、5年連続でギネス世界記録™に認定されています。(正式記録名「M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取り扱い企業」、対象年2024年、取扱件数1,088件)
1,000以上の会計事務所や地方銀行の9割を超える金融機関、600名超のM&Aコンサルタント、約40名の有資格者(公認会計士・税理士等)と連携しながら支援体制を整えている点が特徴です。全国の中堅・中小企業経営者に寄り添い、事業承継や成長戦略の手段としてM&Aの支援を行っています。
「自分の実力を試したい」異業種からM&A業界への挑戦
──SIerからM&A業界への転職理由をお聞かせください。
立花氏:自分の営業力を試したいと思ったからです。前職では大手企業を担当していたのですが、自分の力だけではなく、会社の看板に助けられて商談が進む場面もありました。
営業は好きでしたが、自分の存在価値を再確認したいという気持ちが芽生え、もっと違う分野に挑戦したいと思うようになりました。
M&A仲介業は「ビジネスの総合格闘技」といわれ、経営者の人生や企業の未来を左右するハイレベルな仕事です。この環境に身を置き、自分がどこまで通用するのか確かめたいと思うようになったのです。
また、父が事業を営んでいたことから、事業承継の課題を身近に感じてきたことも、M&A業界を志す大きな要因になりました。
──前職での経験は現在のお仕事にどう活かされているのでしょうか。
立花氏:前職で培った会計の知識やコンサルティングの経験は、経営の本質的な課題を理解するうえで大きな強みになっています。
M&A業界では決算書を読み解く力が強く求められます。前職では、販売管理システムや会計システムを扱っており、その際に培った会計知識や財務コンサルティング業務の経験は今の業務に活かされています。
またシステム提案の際には、現場に入り込み、在庫の回転率向上や業務の簡素化など、経営課題解決のためのコンサルティング業務も行っていました。
M&Aでも同様に、譲渡企業の経営課題を洗い出し、その課題を解消できる譲受け企業をご提案することが求められます。「企業の課題を捉え、最適な提案をする」というスタイルは、前職の経験が活きていると感じています。
さらに、受託営業ではお客様を自ら開拓する力も必要不可欠です。前職で、新規開拓のためにテレアポなど地道な営業活動を経験していたことは、今の業務を進めるうえでも大きな支えになっています。
創意工夫が成果を左右する、ダイレクトチャネルの営業スタイル
──所属する部署の特徴を教えてください。
立花氏:私が所属するダイレクトチャネルは提携先の金融機関や会計事務所からのご紹介に頼らず、自分で新規開拓をする部署です。ゼロからお客様を発掘し、成約までつなげる必要があるため他部署よりも多くの活動量が求められます。遠方への出張も多く、心身ともに高いパフォーマンスが求められる部署です。
「自分の力で勝負する部署」として自由度は高い一方、創意工夫が伴わないと成果につながりません。テレアポだけでなく、異業種交流会や広告宣伝・セミナー運営などさまざまな施策を実行し、リードを獲得しています。
“成約から成功へ”会社の未来に伴走する本気の提案力

──お客様との関係構築で大切にしていることはなんでしょうか。
立花氏:M&A仲介は、お客様の人生を左右するほどの強い責任感が必要な仕事です。大切な会社を譲渡するという決断をされたお客様に寄り添い、こちらも本気でご提案をするように心がけています。
また当社は「成約から成功へ」をキャッチフレーズにしています。つまり、成約はゴールではなくスタート。M&A成約後の成長や企業価値の向上までを見据え、継続的に支援を行っています。
私は成約後も定期訪問を続け、状況や課題を細かくヒアリングします。M&A成約直後は週に1回、その後も2〜3ヶ月に一度は顔を出し、お客様の人生に一生付き合う姿勢を大切にしてきました。
フォローの継続から次のビジネスにつながることもあり、信頼関係の重要性を改めて感じています。
──M&Aを推進するうえで、特徴的な進め方があれば教えてください
立花氏:特にM&Aの最終段階では、譲渡企業の社長の感情に寄り添うことを大切にしています。
M&Aは経営者にとって不安がつきものです。成約直前に「やっぱりやめる」と判断が揺らぐことも珍しくありません。そのような場面では、経営者に対し頭ごなしに説得するのではなく、改めて「なぜM&Aを考えたのか」という原点を一緒に振り返る対話を行います。遠方のお客様でも直接訪問して、顔を合わせて話すことを大切にしています。
たとえば、従業員の将来を守るといった当初の目的を再確認することで、社長が冷静さを取り戻し、プロジェクトを前に進められるように支援します。
このようにお客様の人生に深く関わり、本気で向き合う姿勢が特徴です。
余命宣告を受けた社長の想いをつないだM&A
──特に記憶に残っているM&Aの事例を教えてください。
立花氏:余命宣告を受けた社長から相談を受けた案件が忘れられません。半年という短い期間で、社長の想いを継いでくれる企業を探し、やっと譲受け企業が見つかりました。
しかしトップ面談の当日の朝、社長がお亡くなりになりました。プロジェクトがご破算になるかと思われましたが、なんとか社長の奥様にご対応いただくこととなりました。
奥様は譲受け企業の若手社長が全力で仕事に向き合う姿勢をご覧になり、亡くなった旦那様の若い頃にそっくりだと感動し、そのままご成約に至りました。通常は何度か面談を重ねたうえで譲渡の判断をされるのですが、まさに「人との縁をつないだ」奇跡的な瞬間だったと思います。
経営者に寄り添う責任の重さを改めて感じた経験でした。
成約率を高める「着手金」と会社の未来を祝う「成約式」

──改めて、御社独自の強みについてお聞かせください!
立花氏:他社との最も大きな違いは、ビジネスモデルにおける着手金の有無です。日本M&Aセンターは、M&Aの成約が不確実なスタート段階で、譲渡企業と譲受け企業の双方から着手金を頂戴します。
着手金をお支払いいただくことで、両社のM&Aに対する「覚悟」や「本気度」を確認できるのがメリットです。
さらに、当社には「成約式」という、両社の新しい門出を祝う文化があります。成約式は譲渡企業と譲受け企業の“結婚式”のような場です。「成約式を行った会社同士は、その後の経営統合が順調なケースが多い」というM&Aコンサルタントの提案により、専任のセレモニースタッフが企画から運営まで一貫して担当しています。
その場でお客様から感謝のお手紙をいただくこともあり、営業として非常に嬉しい瞬間です。
数字だけではなく、人の気持ちに寄り添い、企業とその先の未来を大事にする会社でありたいと考えています。
コンサル経験が最大の武器 経営者の信頼を勝ち取るM&A業界でのキャリア戦略
──成長と報酬面についてどう感じていますか。
立花氏:M&A仲介は、経営者の未来や社員の人生を左右する仕事です。その責任に正面から向き合うことで、自分自身の人間力も鍛えられると強く感じます。
報酬は「やった分だけ評価される」という公平な仕組み。責任と報酬が両立していることも、この仕事の醍醐味だと思います。
──最後に、この記事を読まれる読者へのメッセージをお願いします。
立花氏:M&A業界は銀行や金融業界出身者が大半を占めていますが、SIerやコンサル出身者が持つ業務フローの理解力や現場に入り込む力は、金融知識とは異なる強みとなります。
特にコンサルティング業務の経験がある方に向けて、M&A業界への転職はおすすめだと強く伝えたいです。経営者と同じ視座で課題を整理し、成長戦略を描く過程では「本当に寄り添ってくれている」と心からの信頼をいただける瞬間があります。
また、M&Aは成約して終わりではなく、システム再編など統合後の成長戦略を描くことも多く、前職で培った知見がそのまま価値になります。
大きな責任感を持って、お客様の大切な意思決定に関わるM&Aの世界に、ぜひ挑戦してほしいと思います。


