農業経営の課題は、天候や市場価格の変動だけでなく、人手不足や販路の確保、補助金の活用まで多岐にわたります。こうした悩みを抱える中小規模の農家にとって、専門知識を持つ農業コンサルティング会社の存在は大きな支えとなるでしょう。
近年では、経営戦略の立案から販路拡大、ICT導入支援まで幅広いサポートを提供する企業が増えており、選択肢も多様化しています。この記事では、信頼できる農業コンサルティング会社5社を厳選してご紹介します。
自分に合ったパートナー選びの参考にしてください。
農業コンサルティング会社おすすめ5社！
ここからは、おすすめの農業コンサルティング会社を紹介します。
株式会社日本総合研究所
- スマート農業の導入支援に強み
- バリューチェーン改革とブランディングに対応
- 社会課題や政策に精通したコンサルティング
株式会社日本総合研究所は、スマート農業や食品バリューチェーンの改革に強みを持つ総合コンサルティングファームです。日本国内の農業を取り巻く環境が人口減少や地政学的リスクの高まり、SDGsの浸透によって大きく変化する中、株式会社日本総合研究所は生産者と消費者をつなぐ持続可能なフードシステムの構築を支援の柱としています。
特に、IoTやICTを活用したスマート農業の導入による収益性の改善や、農産物・食品のブランド価値向上に向けた戦略的なブランディング支援は、多くの中小規模農家から高く評価されています。さらに、日本総研は政策や社会課題にも精通しており、補助金活用や持続可能な経営戦略に関するアドバイスも可能です。
現場の課題を丁寧にヒアリングしながら、経営のデジタル化や高付加価値化を実現する提案力が魅力です。
| 株式会社日本総合研究所の基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社日本総合研究所 |
| 設立 | 1969年2月20日 |
| 本社所在地 | 東京都品川区東五反田2丁目18番1号大崎フォレストビルディング |
| 公式サイト | https://www.jri.co.jp/ |
株式会社パソナ農援隊
- 人材マッチングと派遣に強み
- 就農支援・研修プログラムの展開
- 地域連携型の労働支援と定着支援
株式会社パソナ農援隊は、設立以降、農業分野でさまざまな事業を展開してきた実績のある会社です。今後の農業のため、農業に携わる方のため、そして日本文化、食文化のために事業に取り組んでいます。
新・農業人スタート支援にも力を入れており、農業で働くことを身近に感じてもらえることを目的にしています。目的や興味に合わせて選べる、農業への就転職セミナー・一日農場体験やフィールドワーク、気軽に参加いただけるミニイベントなど、多様なイベントを用意しているのも特徴です。
農業の指導者・支援者、農業経営者、新規就農者、自治体、JA、地方銀行向けの研修事業の事業企画・事業統括・事業運営等を行っているので、気軽に相談してみてください。
| 株式会社パソナ農援隊の基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社パソナ農援隊 |
| 設立 | 2011年12月1日 |
| 本社所在地 | 東京都港区南青山三丁目1番30号 |
| 公式サイト | https://pasona-nouentai.co.jp/ |
株式会社農業総合研究所
- 農家と消費者を直結する販路モデルの支援
- 商品開発から流通まで一貫サポート
- マーケティング力と地域資源活用の強み
株式会社農業総合研究所は「農家と消費者をダイレクトにつなぐ流通プラットフォーム」を提供する農業ベンチャー企業です。特に、全国のスーパーマーケットや小売店と提携した「農家の直売所」モデルは、農産物の高付加価値販売を実現する手法として注目されています。
日本における青果類の最大の販売チャネル（メインストリーム）である食品スーパーを通して多くの生産者と生活者を繋ぐ新しいプラットフォームを構築している会社です。
単なるコンサルティングにとどまらず、販路支援を実行までサポートする点が最大の強み。出荷システムや物流支援、売上管理の仕組みまで一気通貫で支援してくれるため、販売先に困っている農家には非常に心強いパートナーです。
農家の直売所事業と産直事業に取り組んでおり、農業経営を改善・成長させたいと考えている企業にはピッタリのコンサルティング会社と言えるでしょう。
| 株式会社農業総合研究所の基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社農業総合研究所 |
| 設立 | 2007年10月 |
| 本社所在地 | 和歌山市黒田99-12寺本ビルⅡ 4F |
| 公式サイト | https://nousouken.co.jp/ |
NTCコンサルタンツ株式会社
- 農業インフラ整備に特化
- 環境保全型農業の設計支援
- 地域自治体との連携による包括支援
NTCコンサルタンツ株式会社は、愛知県名古屋市に本社を置くコンサルティング会社です。全国に拠点を持ち、農業土木分野を中心に、建設コンサルタントとして培った技術とネットワークを活かし、地域活性化をサポートしています。
主に「農業農村整備事業」という形で支えており、水に関する分野では、ダムといった大きなものから田畑の横を流れる水路といったものまで、幅広い分野で企画立案から設計・施工管理、調査・試験・解析などを行っているのが特徴です。農村をはじめとする地域活性化への施策立案や、農業をビジネスとして加速させるための提案など、社会に役立つ仕事、人に喜びをもたらす仕事を支援しています。
全国トップクラスを誇る農業農村整備事業の業務実績に結実しているのもNTCコンサルタンツ株式会社の特徴で、身近な材料である土や岩で堤を築くかんがい目的の「フィルダム」に関するコンサルティング業務実績は全国トップクラス※です。
| NTCコンサルタンツ株式会社の基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | NTCコンサルタンツ株式会社 |
| 設立 | 1968年11月1日 |
| 本社所在地 | 名古屋市中区錦二丁目4番15号 |
| 公式サイト | https://www.ntc-c.co.jp/index.html |
参照元
株式会社JAMPS
- 農産物のブランディングとマーケティング支援に強み
- 商品企画からプロモーションまでの一貫支援
- 万全のサポート体制を構築
株式会社JAMPSは、企業の農業参入から栽培・運営・販売・6次産業化を一貫してコンサルティングしてくれる会社です。支援先では農業未経験の中小企業が新規で農業に参入し、毎年反収を伸ばし続けています。
これは、全国の支援先の栽培データを蓄積し、毎年改善を行っているからできることです。独自の栽培理論に基づいて、同じ農法、施設・設備だからデータを活かせるのが強みです。
メンバーの多くがコンサルティング会社出身で、支援先の経営者や幹部の方だけでなく、農場長やパート従業員ともコミュニケーションを取りながら、密着してサポートを行っています。支援先企業の農業参入および農業経営を成功させるため、各分野の専門家や協力会社と連携し、万全のサポート体制を構築しています。
| 株式会社JAMPSの基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社JAMPS |
| 設立 | 2017年1月5日 |
| 本社所在地 | 東京都千代田区大手町1丁目6-1SPACES大手町ビル1階 |
| 公式サイト | https://jamps.co.jp/ |
農業コンサルタントの支援内容は？
農業コンサルタントに依頼する前に、まずはその仕事内容を理解することが重要です。依頼内容によって支援の深さや方向性が変わるため、あらかじめ何をどこまで任せられるかをイメージしておくと、相談時にスムーズに話が進みます。
ここでは、農業コンサルタントの支援内容を紹介します。
農業経営をサポートする
農業コンサルタントの中心的な役割のひとつが、農業経営の改善や戦略立案のサポートです。生産性や収益性に課題を抱える農家に対し、現状の経営状況を丁寧に分析し、課題を可視化します。
売上・コスト・資産のバランスや、補助金・助成金の活用状況なども含めて経営全体を見直します。その上で、営農計画の見直し、収支シミュレーション、販路開拓戦略、資金調達手段の提案などを行い、持続可能で成長性のある農業経営への道筋を具体的に描いてくれるのです。
特に近年は、データを活用したスマート農業への移行や、法人化による事業拡大の支援も増加傾向にあります。経営に悩む中小規模農家にとって、的確なアドバイスと伴走型の支援が得られる心強い存在です。
人材の確保・育成をサポートする
農業現場では慢性的な人手不足が深刻化しており、高齢化が進む中小規模農家にとって、人材確保と育成は大きな課題です。農業コンサルタントは、求人活動の支援から新規就農者とのマッチング、人材育成プログラムの構築まで、人に関する課題解決も手がけます。
例えば、地方自治体と連携したインターン受け入れ体制の整備や、技能実習生の受け入れ支援、リーダー候補者の育成研修などを通じて、即戦力と将来の担い手の確保を同時に進めます。さらに、従業員の定着率を上げるための評価制度や労務管理の見直しなど、経営者目線での人材戦略の立案も可能です。
人が育てば事業が育つという観点から、長期的な農業経営の安定を支援してくれます。
6次産業化を支援する
農業コンサルタントは、1次産業に加えて、加工（2次）・販売・サービス（3次）を取り入れる6次産業化の支援にも力を入れています。これは農産物の付加価値を高め、収益向上を図るとともに、地域の雇用創出やブランド力向上にもつながる戦略※です。
具体的には、加工所や直売所の立ち上げ支援、商品開発、パッケージデザイン、EC販売の導入、販売チャネルの構築などをワンストップで支援します。また、6次産業化の補助金申請や事業計画書の作成など、資金調達に関するアドバイスも提供します。
農林水産省の支援制度や自治体の補助金を最大限に活用しながら、農業の可能性を広げる実践的なサポートを行う役割です。単なる生産者から地域の事業主へとステップアップしたい農家にとって、有効な選択肢となるでしょう。
参照元
農業コンサルティング会社の選ぶときのポイント
農業コンサルティング会社を選ぶときは、単に知名度や価格だけで決めるのではなく、実績や専門性、費用対効果など複数の観点から慎重に判断することが成功への近道です。ここでは、農業コンサルティング会社の選ぶときのポイントを3つご紹介します。
実績があるか
農業コンサルティング会社を選ぶ際、まず注目すべきは過去の支援実績です。実績が豊富な会社は、さまざまな農家や法人への支援経験を通じて多くの成功パターンと失敗パターンを蓄積しており、実践的なアドバイスを提供してくれます。
特に、自分の経営規模や地域、作物・業態（露地栽培、ハウス栽培、果樹園など）と似た事例があるかどうかを確認すると、マッチする支援が期待できます。また、支援後の成果や改善データを公表しているか、クライアントの声を掲載しているかも重要なチェックポイントです。
成功事例の有無は、そのコンサルタントの信頼性と提案力の裏付けともいえるため、比較検討時には必ず押さえておきましょう。
農業への知見・専門性があるか
農業は地域性や気候、法制度、品種ごとの特性など、多様な要素が絡む特殊な産業です。そのため、農業分野に精通していない一般的な経営コンサルタントでは、的外れなアドバイスをされるリスクもあります。
農業コンサルティング会社を選ぶ際は、農業に関する専門知識があるか、農業技術者や農業経済の専門家が在籍しているかを確認しましょう。また、農水省の施策や補助金制度に詳しいかどうか、スマート農業や6次産業化といった分野への対応力があるかも見極めるポイントです。
加えて、JAや自治体、農業法人などとのネットワークが豊富な会社であれば、地域に合った実効性の高い提案が期待できます。知見の深さはコンサルの質に直結するため、慎重な確認が欠かせません。
サービス内容に対して費用感が適切か
農業コンサルティングの料金は会社ごとに大きく異なり、支援内容や期間、担当者の専門性によって費用が変動します。そのため、単に価格の安さで判断するのではなく、提供されるサービス内容と料金のバランスが取れているかを見極めることが大切です。
例えば、短期間の経営診断のみで数十万円かかる場合もあれば、1年を通じて人材育成・販路開拓・資金調達まで一括支援してもらえるケースもあります。無料相談や初期診断を実施している会社もあるので、実際に相談してみて費用感と対応内容を比較するのも有効です。
また、補助金や助成金の申請サポートが含まれているかどうかも、コストパフォーマンスに大きく関わる要素です。費用の安さだけでなく、投資に見合うリターンが期待できるかを基準に判断しましょう。
農業コンサルティング会社の費用相場
農業コンサルティングの費用は、依頼する内容や農業経営の規模、支援期間によって大きく異なります。下記は、株式会社農業経営支援センターのコンサルティング報酬規定の一部です。
| サポートプラン | 費用 |
|---|---|
| 農業経営顧問契約（原則１年間） | 月額顧問料2万円～ |
| スポット契約 | ・農業経営計画の策定（経営戦略や経営理念等の作成）基本料50万円 ・財務改善（バランスのとれた財務構造への改革）基本料30万円 ・組織整備（雇用型経営の組織作り、規定整備等）基本料20万円 |
| 農業経営の事業継承 コンサルティング | 基本料30万円 |
| 農業経営の法人化に伴う コンサルティング | 基本料30万円 |
| 組織変更に伴う コンサルティング | 基本料20万円 |
| その他 | ・融資に伴う改善計画案等の作成 5万円～10万円 ・面談による相談料 1時間５千円 |
費用はコンサルタントの経験や支援の深度にも左右されるため、複数社で見積もりを取り、内容と価格のバランスを比較することが重要です。また、自治体の補助金や助成制度を活用できる場合もあるため、併せて確認すると良いでしょう。
農業コンサルティングを利用するメリットとは？
ここでは、農業コンサルティングを利用するメリットを解説します。
客観的かつ専門的なアドバイスを得られる
農業経営では、自分では気づきにくい問題点が潜んでいることも多く、収支や作業効率、販売戦略の見直しが必要な場面に直面します。農業コンサルタントを活用することで、第三者の立場から経営を客観的に分析してもらい、経営改善につながる具体的なアドバイスを得ることが可能です。
作物の生産効率が悪い・販路が限られていて売上が伸びない等の悩みに対しても、経験豊富なコンサルタントが、生産管理・流通・販売まで一貫した視点で問題点を抽出してくれます。さらに、改善に向けた実行可能な施策を提示してくれます。
経営課題に対して感覚ではなくデータや実例に基づいたアドバイスが受けられるため、自信をもって経営判断を行えるようになる点も大きなメリットです。
ビジネスモデルの提案をしてもらえる
農業経営が行き詰まりを感じている場合、既存のやり方に固執することが原因になっているケースも少なくありません。農業コンサルタントに依頼することで、自分では思いつかなかった新しいビジネスモデルの提案を受けられることがあります。
例えば、単純な生産販売にとどまらず、加工・直販・観光農園などの6次産業化や、サブスクリプション形式の定期便販売、ふるさと納税制度の活用など、多様な手法を組み合わせたモデルへと転換する支援を受けることも可能です。
また、地域資源を活かしたブランディングや、農福連携といった社会課題に対応した事業モデルの提案を受けることで、単なる利益拡大だけでなく、地域に根ざした持続可能な経営を実現できます。新たな視点での挑戦は、農業の未来を切り開く大きな第一歩となるでしょう。
農業経営の厳しい収益事情
多くの中小規模農家が直面している最大の課題の一つが、思うように利益が残らない収益構造です。従来の農業では、収穫した作物をJAや卸業者、流通業者などに販売する流れが一般的でした。
このルートは出荷や流通の手間を軽減できるというメリットがある一方で、仲介業者ごとに手数料が発生するため、最終的に農家の取り分が少なくなってしまうという構造的な問題を抱えています。しかし近年では、消費者との距離を縮める直販型の販路が注目されています。
直売所での販売、ECサイトを通じたオンライン販売、農家と飲食店や小売店を直接つなぐマッチングサービスなど、多様な方法が広がっているのが現状です。これらを活用することで、仲介コストを削減し、利益率を大幅に改善できる可能性があります。
農業コンサルティング会社に関するQ＆A
ここでは、農業コンサルティング会社に関するよくある質問にお答えします。
農業に向いていない人の特徴は？
農業は自然を相手にする仕事であり、計画通りにいかないことも多々あります。そのため、すぐに結果を求めすぎる短期志向の人や、体力的な作業に抵抗がある人は農業に向いていない可能性があります。
また、農業経営は天候や市場価格の影響を強く受けるため、リスク管理や収支の計算が苦手な人も注意が必要です。さらに、孤立して作業する時間も多く、自分で考えて動く力が求められます。
そのため、指示待ちタイプの人や柔軟な対応が苦手な人もストレスを感じやすいでしょう。ただし、こうした弱点を補うために、農業コンサルタントに相談して適性を見極めたり、自分の得意分野を活かした経営スタイルを模索することも可能です。
コンサル業界の5大会社は？
コンサルティング業界には多数の企業がありますが、特に実績や知名度が高く、総合的な支援体制を持つ「5大コンサルティング会社」として、以下の企業がよく挙げられます。
これらの企業は農業特化ではありませんが、大規模農業法人や自治体とのプロジェクトに多く関与しており、戦略・IT・人材・制度と多面的な支援が可能です。中小規模農家が相談する際は、地場密着型の農業コンサルと組み合わせるとより効果的です。
農業コンサルティング会社のまとめ
農業コンサルティング会社は、経営改善のノウハウや販路拡大、人材育成、6次産業化の支援など、農業経営における幅広い課題をプロの視点でサポートしてくれます。今回ご紹介した5社は、それぞれに特徴があり、依頼内容や規模に応じて適切なサポートが期待できます。
特に経営に悩みや課題を感じている中小農家の方は、専門家の力を借りることで視野が広がり、収益向上や事業の安定化につながるはずです。まずは気になる農業コンサルティング会社に相談して、今後の可能性を一緒に模索してみましょう。
