マンションの大規模修繕は、建物の資産価値や住環境を守るうえで欠かせない重要な取り組みです。一方で、修繕範囲や実施時期、工事費の妥当性など判断すべき項目が多く、管理組合だけで整理・決定することに難しさを感じるケースも少なくありません。
そうした課題の整理に役立つのが、大規模修繕コンサルティングです。第三者の立場から調査・設計・工事会社選定・工事監理までを支援し、判断の根拠を明確にすることで、納得感のある意思決定につなげやすくなります。
この記事では、大規模修繕コンサルティングの概要や必要性、支援内容、費用相場、会社の選び方を整理し、おすすめのコンサルティング会社も紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
大規模修繕コンサルティングとは

大規模修繕コンサルティングとは、マンションの大規模修繕工事を進めるにあたり、計画立案から工事会社選定、工事中の確認までを第三者の立場で支援するサービスです。
大規模修繕コンサルを活用することで、管理組合だけでは判断が難しい修繕範囲や実施時期、工事費の妥当性を整理しやすくなります。専門知識を持つ立場から助言を受けられるため、工事会社任せになりにくく、意思決定の透明性を高められる点が特徴です。
コンサルティングを担う主体には、大規模修繕を専門とするコンサルタント会社のほか、マンション管理会社や一級建築士事務所などがあり、それぞれ強みや関与の仕方が異なります。建物の状況や管理組合の体制に合わせて適切な依頼先を選ぶことが大切です。
大規模修繕コンサルティングを提供する企業の種類

大規模修繕コンサルティングは、大きく分けると、専門コンサルタント会社、マンション管理会社、建築士事務所の3つがあり、それぞれ関与の仕方や強みが異なります。ここでは、修繕コンサルティング会社の種類とそれぞれの特徴を解説します。
大規模修繕専門コンサルタント会社
大規模修繕専門コンサルタント会社は、マンションの大規模修繕を主軸に活動している企業です。管理会社の工事部門や施工会社から独立・分社したケースも多く、現場経験を豊富に持つ点が特徴といえます。マンション管理士や建築士などの有資格者が在籍していることも多く、調査・設計・工事会社選定までを一貫して支援できる体制が整っています。
工事会社から距離を置いた立場で助言を行うため、工事費の妥当性や仕様内容を客観的に整理しやすい点は管理組合にとって安心材料です。企業によって専門領域が異なることから、過去の実績や支援スタイルを確認したうえで、一番マッチした依頼先を選定するとよいでしょう。
マンション管理会社
マンション管理会社の中には、大規模修繕コンサルティングを担う部門を設けているケースがあります。日常管理を通じて建物の状況や居住者の特性を把握しているため、管理組合としては相談しやすく、意思疎通がスムーズに進みやすい点が特徴です。修繕履歴や管理データを踏まえた提案が受けられる点も強みといえます。
一方で、施工部門や協力会社と関係を持つ場合もあるため、中立性の確保には注意が必要です。比較検討を行わずに進めてしまうと、より専門性の合う企業を見逃してしまう可能性もあります。管理の延長として依頼するのか、第三者性をどこまで求めるのかを整理しておくことが、納得感のある判断につながります。
建築士事務所
建築士事務所は、建物設計や工事監理の知見を生かして大規模修繕コンサルティングを提供します。一級建築士が在籍している場合、劣化診断や仕様検討、工事中のチェックなどを専門的な視点で確認してもらえる点は安心材料になります。新築時の設計を担当した建築士が、その後の大規模修繕にも関与するケースもあり、建物の成り立ちを踏まえた助言が期待できるでしょう。
一方で、すべての建築士事務所がマンション修繕を専門としているわけではありません。管理組合側に立って合意形成や工事会社選定を支援した経験が少ない場合もあるため、過去の実績や関与範囲を確認することが重要です。設計・監理の強みをどこまで修繕全体に生かせるかが、依頼判断のポイントにつながります。
大規模修繕コンサルティングが必要な理由

マンションの大規模修繕は、専門知識と長期視点が求められる重要な取り組みです。一方で、管理組合だけで判断・推進するには負担や不安が大きいのも実情といえます。ここでは、大規模修繕コンサルティングが必要な理由を解説します。
工事費の妥当性・適正価格を確認できるから
大規模修繕工事では、提示された工事費が本当に妥当なのかを判断するのが難しくなりがちです。見積書には専門用語や工法が並び、施工会社ごとに書式や考え方も異なるため、単純な金額比較では適正かどうかが見えにくくなります。
大規模修繕コンサルタントは、建物調査や劣化診断をもとに必要な工事内容を整理し、数量や仕様が適切かを専門的な視点で確認します。その結果、過剰な工事や相場とかけ離れた金額に気づきやすくなり、工事費の根拠を明確にできます。感覚や経験則に頼らず、合理的な判断ができる点は大きなメリットです。また、住人から「なぜこの金額なのか」と問われにくい環境を整えられる点も、魅力といえます。
工事会社に依存しない「中立的な立場」が必要だから
大規模修繕を施工会社主導で進めると、提案内容が工事側に都合のよい仕様になりやすい点に注意が必要です。工法や材料の選定次第で工事費は大きく変わりますが、その妥当性を管理組合だけで見極めるのは容易ではありません。
大規模修繕コンサルタントは、施工会社とは独立した第三者として関与し、設計条件や見積条件を整理したうえで比較検討を行います。特定の会社に偏らない判断材料がそろうことで、公平性と透明性を高めることが可能です。結果として、管理組合全体の利益を軸に修繕を進めやすくなり、納得感のある意思決定や、理事会内の意見調整も進めやすくなります。
管理組合の負担を軽減できるから
大規模修繕は、調査・設計から業者選定、工事中の確認、住民への説明まで、長期間にわたり多くの業務が発生します。これらを理事や修繕委員だけで対応するのは負担が大きく、専門的な判断に迷う場面も少なくありません。大規模修繕コンサルタントが関与することで、資料作成や技術的な確認、工事中の監理などを任せることができ、理事会は意思決定に集中しやすくなります。
また、住民説明も整理された情報をもとに進められるため、合意形成が円滑に進みやすくなります。時間的・精神的な負担を抑えながら修繕を進められる点は大きなメリットです。無理のない体制で修繕を進めることが、結果的にプロジェクト全体の質を高めることにつながります。
大規模修繕コンサルティング会社の主な支援内容

大規模修繕コンサルティング会社は、計画から完了までを管理組合の立場で支援し、その内容は多岐にわたります。ここでは、大規模修繕 コンサルが担う主な支援内容を紹介します。
建物調査
建物調査は、大規模修繕工事を検討するうえで最初に行われる重要な支援内容です。外壁や屋上、防水、設備などの劣化状況を専門家が確認し、現時点で必要な修繕内容を整理します。第三者の立場で調査を行うことで、不要な工事や過剰な仕様を避けやすくなり、修繕積立金の無駄遣いを防ぐことにつながります。
また、調査の目的は、大規模修繕工事を前提に進めることだけではありません。劣化の進行度合いを踏まえ、修繕を実施する最適な時期を見極める判断材料として活用される点も重要な要素です。客観的なデータをもとに現状を把握することで、管理組合として納得感のある修繕計画を描きやすくなるでしょう。
改修設計
改修設計は、建物調査の結果をもとに、どの部分をどの水準で修繕するかを具体化する支援です。修繕範囲や工法、使用材料などを整理し、工事内容を明確にすることで、工事会社から提出される見積を同じ条件で比較しやすくなります。設計段階で内容を詰めておくことで、工事費が適正かどうかを判断しやすくなる点も特徴です。
コンサルタントが設計に関与することで、特定の工事会社に有利な仕様が入り込みにくくなり、管理組合の意向を反映した改修内容を整理しやすくなります。短期的な工事費だけでなく、将来の修繕計画やコストバランスを踏まえた提案を受けられるため、長期的な視点でマンションの価値を守る判断につながります。
工事会社の選定支援
工事会社の選定支援は、大規模修繕コンサルティングの中でも特に重要な役割です。コンサルタントは、改修設計の内容をもとに複数の工事会社へ見積を依頼し、金額だけでなく工事内容や体制まで含めて比較できる状態を整えます。条件を統一したうえで比較することで、不透明な価格差や内容の抜け漏れを見極めやすくなります。
また、見積書の精査だけでなく、工事会社の実績や現場代理人の経験、人柄なども含めて評価する点が特徴です。第三者が間に入ることで談合や癒着のリスクを抑えやすくなり、管理組合が納得したうえで工事会社を選びやすくなります。比較のプロセスを可視化することが、後悔の少ない意思決定につながります。
現場チェック・工事品質管理
現場チェック・工事品質管理は、工事が始まってからの支援内容です。設計図や仕様書どおりに工事が進んでいるか、材料や施工方法に問題がないかを、管理組合に代わって専門家が確認します。工事中のチェックは専門知識がなければ判断が難しく、第三者の目が入ることで施工品質を保ちやすくなります。
工事品質を維持するための管理業務も支援内容の一つです。不具合や是正が必要な点があれば、その場で指摘し、是正対応を促す役割も担います。工事完了後のトラブルや追加費用を防ぐ意味でも、工事中から継続的に確認することは重要です。工事の進行を見守る体制があることで、管理組合としても安心して大規模修繕を進められます。
大規模修繕コンサルティング会社おすすめ5社

大規模修繕コンサルティングを提供している企業は複数あります。ここでは、特におすすめの企業を紹介します。
S&Bパートナーズ設計

- 建物調査から設計、施工会社選定、竣工後点検まで一貫して支援
- 管理組合向けの無料勉強会を実施し、知識共有と合意形成をサポート
- マンション大規模修繕に特化した豊富な実績と長期視点のアフター対応
S&Bパートナーズ設計は、マンション管理組合を主な支援対象とし、大規模修繕工事を専門にコンサルティングを行う設計事務所です。建物調査・診断を起点に、改修計画や設計、施工会社の選定支援、工事中の監理、さらには竣工後点検や長期修繕計画の見直しまで、工程全体を通じて関与します。累計物件数1,200物件以上、累計総戸数250,000戸以上※という豊富な実績も特徴です。
強みは、専門用語が多くなりがちな大規模修繕について、無料勉強会を通じて丁寧に説明し、管理組合や修繕委員会の理解を深めている点です。知識の差による不安や疑問を整理することで、住民間の合意形成を進めやすくなります。また、施工後も5年・10年といった節目での点検を行い※2、次回修繕を見据えた助言を行うなど、短期で終わらない姿勢も評価されています。
初めての大規模修繕で進め方に迷っている管理組合や、専門家に中立的な立場で長く伴走してほしいマンションにおすすめです。
| S&Bパートナーズ設計の基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | S&Bパートナーズ設計 |
| 設立 | 1990年8月 |
| 本社所在地 | 東京都港区新橋5-28-3 吉田ビル2F |
| 公式サイト | https://www.sbp-sekkei.jp/ |
大規模修繕コンサルティング株式会社

- 管理組合側に立った中立的な大規模修繕コンサルティングを提供
- 調査・設計・工事会社選定・工事監理まで工程全体を支援
- 住民説明や合意形成を意識した丁寧なサポート体制
大規模修繕コンサルティング株式会社は、マンションの大規模修繕に特化し、管理組合の立場から工事全体を支援するコンサルティング会社です。建物調査によって劣化状況を把握し、必要性に基づいた改修計画や設計を行うことで、過不足のない修繕内容へ導きます。
特徴は、工事会社の選定では複数社の見積内容や提案を比較し、価格だけでなく工法や品質面も含めて検討できる体制を整えている点です。工事中は第三者として現場をチェックし、設計どおりに工事が進んでいるかを確認するため、管理組合の負担軽減にもつながります。住民説明会の支援など、合意形成を意識した対応も特徴といえるでしょう。
施工会社任せにせず、専門家と一緒に納得感のある大規模修繕を進めたいマンション組合におすすめです。
| 大規模修繕コンサルティング株式会社の基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | 大規模修繕コンサルティング株式会社 |
| 設立 | 非公開 |
| 本社所在地 | 東京都大田区仲六郷2-28-14 ミヤタビル302 |
| 公式サイト | https://www.d-shuzen.com/merit/ |
オフィスレコン株式会社

- 分譲マンションの大規模修繕・改修設計に特化した一級建築士事務所
- 創業30年以上の実績※を持ち、超高層マンションにも対応可能
- 給排水設備工事や長期修繕計画の見直しまで幅広く支援
オフィスレコン株式会社は、分譲マンションの「再生」を専門領域とする大規模修繕コンサルティング会社です。新築ではなく、既存建物をどう維持・改良していくかに強みを持ち、建物調査・診断から改修設計、工事監理までを一貫して支援しています。
創業から30年以上※にわたりマンション修繕に携わってきた経験から、初回の大規模修繕はもちろん、2回目・3回目と段階が進んだマンションにも柔軟に対応できる点が特徴です。近年ニーズが高まる超高層マンションの大規模修繕についても早期から実績を積み、技術的な難易度が高い案件にも対応しています。
また、外壁や防水だけでなく、給排水設備工事や長期修繕計画の見直しまで相談できるため、マンション全体を長期視点で捉えた提案が期待できます。建物の特性を踏まえ、専門家として冷静に判断してほしい管理組合におすすめです。
| オフィスレコン株式会社の基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | オフィスレコン株式会社 |
| 設立 | 1985年3月 |
| 本社所在地 | 東京都千代田区神田佐久間町2-7 |
| 公式サイト | https://www.office-recon.jp/ |
株式会社リノシスコーポレーション

- 設立30年以上※、分譲マンション改修に特化した一級建築士事務所
- 年間100件以上※の管理組合から相談を受ける豊富なコンサル実績
- 調査診断から設計、施工会社選定、工事監理、長期修繕計画まで一貫対応
株式会社リノシスコーポレーションは、既存分譲マンションの大規模修繕を専門とするコンサルティング会社です。建物調査診断では、技術担当者が劣化状況や原因を丁寧に把握し、「本当に工事が必要か」という視点も含めて検討を行います。その結果をもとに、不要な工事を避けつつ、長期的な安全性と合理性を意識した改修設計を進める点が特徴です。
設計段階では複数案を提示し、材料サンプルや現地確認を交えながら管理組合と協議を重ね、納得感のある内容へまとめていきます。施工会社選定では、同一条件での見積比較を可能にし、金額だけでなく体制や姿勢も含めて判断できるよう支援し、品質を確保しながら進行状況を共有します。
調査からアフター対応、長期修繕計画の見直しまで一体で任せたいマンション管理組合におすすめです。
| 株式会社リノシスコーポレーションの基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社リノシスコーポレーション |
| 設立 | 1989年4月1日 |
| 本社所在地 | 東京都港区白金1-27-6 白金高輪ステーションビル8F |
| 公式サイト | https://www.renosys.jp/ |
株式会社T.D.S

- マンション改修に特化した設計事務所として高い専門性を持つ
- 公正・透明なプロセスで施工会社選定と工事監理を実施
- 合意形成を重視し、長期にわたる大規模修繕を丁寧にリード
株式会社T.D.Sは、マンションの大規模修繕・耐震補強に特化した設計事務所です。新築とは異なり、居住者が生活を続けながら進める改修工事では、設計力だけでなく、調整力やコミュニケーションが重要になります。同社は事前の調査診断で劣化状況と予算を整理し、現実的かつ合理的な設計を構築する点に強みがあります。
また、設計監理方式を基本とし、同一条件での見積取得やヒアリングを通じて、公平性を重視した施工会社選定を支援するのが特徴です。工事中は品質・安全・工程を管理組合の立場で厳しく確認し、設計どおりに工事が進んでいるかを監理します。さらに、意見が分かれやすい大規模修繕において、合意形成を重視しながらプロジェクト全体を円滑に進める姿勢も特徴といえるでしょう。
専門性と中立性を両立させ、安心して長期の修繕計画を任せたいマンション管理組合におすすめです。
| 株式会社T.D.Sの基本情報 | |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社T.D.S |
| 設立 | 1991年4月 |
| 本社所在地 | 東京都中央区日本橋堀留町1-6-13 昭和ビル2階 |
| 公式サイト | https://www.tds-arc.com/ |
大規模修繕コンサルティング会社の費用相場

大規模修繕コンサルティング会社の費用は、依頼する会社やマンションの規模、支援範囲によって幅がありますが、工事費用の3〜10%程度が一つの目安とされています。設計監理や施工会社選定、工事中の監理まで含めた場合、この水準で設定されるケースが多いです。
また、1戸あたり2〜3万円といった戸数ベースで算出されることもあります。この相場を基にすると、100〜200戸規模で約200〜600万円、201〜400戸規模で約400〜1,200万円が目安になります。
費用は検討材料の一つです。企業ごとに特徴が異なるため、金額だけで判断せず、支援内容や中立性まで含めて比較することで、納得感のある依頼にしましょう。
大規模修繕コンサルティング会社の選び方とは

大規模修繕コンサルティング会社は数多く存在するため、違いが分かりづらいと感じることも少なくありません。効果的な会社に依頼するためにも、実績や支援内容、提案の質を見極めることが重要です。ここでは、依頼先を選ぶ際に確認したいポイントを解説します。
大規模修繕コンサルタントの実績や評判が豊富か
必ず確認したいのは、これまでの実績が量だけでなく質の面でも自分たちのマンションに近いかどうかです。単純に対応件数が多いというだけでは、安心材料としては不十分といえます。築年数や規模、構造、外断熱の有無、タワー型かどうかなど、条件が近いマンションでの支援経験があるかを具体的に確認することが重要です。
あわせて、高耐久化工事や修繕周期の延長など、管理組合が重視したいテーマに対応した実績があるかも見ておきたいポイントです。実際の進め方や課題への向き合い方は、過去の類似事例に色濃く表れます。公式サイトの実績紹介だけでなく、管理組合向けの説明資料や第三者の評判も含めて、多角的に確認しておくと判断しやすくなるでしょう。
丁寧なヒアリングがあるか
担当者による丁寧なヒアリングがあるかは、重要な要素です。大規模修繕コンサルティングでは、最初のヒアリングの質がその後の進行を大きく左右します。建物の状況だけでなく、管理組合としての考え方や優先順位、どこまで主体的に関わりたいのかといった運営スタンスまで丁寧に聞き取ってくれるかが重要です。
時間がないから任せたいのか、判断材料を整理してほしいのかによって、求める支援内容は変わります。初期段階で一方的な提案を進めるのではなく、背景や不安点を整理しながら方向性をすり合わせてくれるコンサルタントであれば、合意形成も進めやすくなります。ヒアリングの段階で質問が具体的かどうかは、信頼性を見極める一つの目安になるでしょう。
公平な立場からアドバイスしてくれるか
コンサルタント選定では、公平性と中立性が保たれているかの確認も欠かせません。施工会社との関係性が不透明な場合、工事費が割高になったり、不要な工事が含まれたりするリスクがあります。施工会社との癒着がないことを明確に説明できるか、場合によっては誓約書の提示が可能かも確認しておくと安心です。
また、診断結果によっては工事を急がず、部分補修や先延ばしという判断が出ることもあります。その際に、工事ありきではなく、客観的な根拠をもとに説明してくれる姿勢があるかが重要です。管理組合の立場に立ち、長期的な視点で助言してくれるかどうかが、信頼できるコンサルタントを見極める分かれ目といえるでしょう。
大規模修繕コンサルティング会社に依頼するメリット

大規模修繕コンサルティング会社に依頼することで、管理組合だけでは判断が難しい専門領域を補いながら、工事全体を安定して進めやすくなります。ここでは、大規模修繕コンサルティング会社を活用するメリットを解説します。
建築・設備の専門知識を補える
コンサルティング会社に依頼することで、建物調査や修繕計画の立案、工事項目の妥当性判断までを専門家の視点で整理できます。
劣化状況に基づいた優先順位付けや、将来を見据えた仕様選定についても助言が得られるため、判断の根拠が明確になります。専門知識が不足したまま進めた場合に起こりがちな、施工会社との認識のズレや説明不足による行き違いを防ぎやすくなる点も重要です。結果として、工事中の手戻りや判断の迷いが減り、進行の安定につながります。
加えて、専門家が図面や仕様書の読み解きを手伝うことで、理事会や修繕委員会の説明も組み立てやすくなります。設備更新の要否や範囲を早めに整理できれば、後からの追加工事や費用の膨らみも抑えやすくなるでしょう。
信頼できる工事会社を選びやすくなる
工事会社選定は、大規模修繕の成否を左右する重要な工程です。コンサルティング会社が間に入ることで、同条件での見積取得や提案内容の比較がしやすくなり、価格と内容のバランスを冷静に判断できます。
提案書や見積の読み解きもサポートしてもらえるため、金額だけでなく工事品質や体制まで含めた検討が可能です。こうした第三者の視点が入ることで、施工会社との行き違いや、それに起因する工期の遅延、追加費用発生のリスクを抑えやすくなります。
管理組合として納得感のある選定ができる点は、大きなメリットといえるでしょう。さらに、比較の観点が整理されると、説明会での質疑にも一貫性が出て、疑念や不信感を生みにくくなります。
不要な施工を省きコスト削減しやすくなる
大規模修繕では、必要以上に工事項目が膨らみ、結果として費用が増えてしまうケースも少なくありません。コンサルティング会社が入ることで、劣化調査の結果に基づき、本当に必要な工事と見送れる工事を整理可能です。すべてを一度に直すのではなく、優先順位を付けて段階的に対応する判断もしやすくなります。
修繕積立金の範囲内で実現可能な計画を組み立てられるため、資金面での不安も軽減されます。専門家の視点が入ることで、「工事ありき」の提案を避けやすくなる点も重要です。結果として、不要な施工を省きながら、将来を見据えたコストコントロールが可能になります。費用の根拠が明確になることで、住民への説明もしやすくなり、納得感のある判断につながります。
住民の合意形成がスムーズに進みやすくなる
大規模修繕では、理事会や修繕委員会、住民間で意見が分かれ、合意形成に時間がかかることがあります。コンサルティング会社が第三者として関与することで、専門的な内容を整理し、分かりやすく説明してもらえる点は大きなメリットです。工事内容や費用の妥当性が客観的に示されるため、特定の意見に偏りにくくなります。
施工会社との行き違いや説明不足は、判断の遅れや追加費用発生の原因になり得ますが、そのリスクも抑えやすくなります。説明会資料や議事録の整理を支援してもらえるケースもあり、情報共有が進みやすくなります。結果として、不信感や対立を避けながら、合意形成を前に進めやすくなるでしょう。
大規模修繕コンサルティング会社に依頼するデメリット

大規模修繕コンサルティングは多くのメリットがある一方で、事前に理解しておきたい注意点もあります。ここでは、依頼前に把握しておくべき代表的なデメリットを整理して解説します。
コンサル費用が発生する
大規模修繕コンサルティングを依頼する場合、工事費とは別にコンサルティング費用が発生します。費用はマンションの規模や契約方式によって異なりますが、目安としては総工事費の5〜10%前後となるケースが一般的です。とくに、戸数が少ない小規模マンションでは、戸当たりの負担額が大きくなりやすく、費用対効果に悩むこともあります。
また、調査範囲の追加や設計変更が発生すると、当初想定していなかった費用がかかる可能性もあります。そのため、契約前に支援範囲と追加費用が発生する条件を明確に確認しておくことが重要です。複数社から見積を取り、契約形態を比較することで、費用負担を抑えやすくなります。
目的や依頼内容を明確にしないとトラブルのリスクがある
目的や役割分担が曖昧なままだと、思わぬトラブルにつながることがある点にも注意が必要です。
たとえば、コンサルタントと施工会社の意見が食い違った場合、調整に時間がかかり、工事全体の進行が遅れるケースもあります。責任範囲が不明確な状態では、判断の先送りや説明不足が生じやすく、施工会社との行き違いが発生し、その結果として工期の遅延や追加費用が生じる原因になり得ます。
トラブルを避けるためには、管理組合として何を支援してほしいのか、どこまで主体的に関与するのかを整理し、契約内容に反映させることが重要です。初期段階で認識をそろえておくことで、不要な混乱を防ぎやすくなるでしょう。
大規模修繕コンサルティング会社に関するQ&A

大規模修繕コンサルティング会社に関してよく寄せられる疑問を整理し、導入前に理解しておきたいポイントをまとめました。依頼の判断軸を整えるための基礎知識として活用してください。
大規模修繕コンサルタントの最大手はどこですか?
大規模修繕コンサルタントの最大手を公的に示す統一基準や公式データは存在しません。企業規模、実績件数、対応エリアなど評価軸によって見え方が変わるためです。
その前提を踏まえたうえで、知名度や実績数の多さという観点では、株式会社翔設計や株式会社スマート修繕などは大手といえる存在でしょう。翔設計は公式ホームページ上で、これまでに950件以上のオーナー・管理組合からの発注実績※1があると公表しています。一方、スマート修繕も全国対応で見積実績2,000件以上※2と、対応件数の多さが特徴です。
ただし、大手企業であっても各企業ごとに強みは異なります。実績の中身や得意分野が自分たちの状況に近いかを、必ず確認しましょう。
参照元
※1株式会社翔設計
※2株式会社スマート修繕 2022-2024年実績・自社調べ
大規模修繕コンサルタントが必要なマンションの特徴とは?
大規模修繕コンサルタントの導入が必要となるマンションには、いくつか共通した特徴があります。
- 管理組合や理事会に建築・修繕の専門知識を持つ人がいない
- 築15年以上で初回、または2回目以降の大規模修繕を迎えている
- 100戸以上の中規模〜大規模マンションで、意見集約が難しい
- タワー型や外断熱など、構造が複雑で判断が難しい
- 過去の修繕でトラブルや品質面の不満を経験している
- 施工会社や管理会社主導で話が進み、透明性に不安がある
このようなケースでは、第三者の立場から客観的に整理してくれるコンサルタントの存在が、判断の支えになります。自分たちのマンションの状況や課題を整理したうえで、総合的に導入を検討することが大切です。
大規模修繕コンサルティング会社のまとめ

大規模修繕コンサルティングを活用することで、管理組合だけでは整理しきれない技術面や費用面の課題を可視化し、納得感のある修繕判断を進めやすくなります。施工会社主導で話が進んでしまう状況を避けやすくなる点もメリットです。
一方で、コンサルティング会社ごとに実績や得意分野、支援スタイルは異なります。本記事で紹介した内容を参考に、マンションの状況や管理組合の体制に合った依頼先を検討してください。


