海外に一部業務を委託するオフショア開発は、特に不況の最中でも需要が高まり続けるIT業界で、国内のIT人材の高騰に伴いメジャーになってきています。
- 安い人件費で質には問題ない?
- どんな国に発注するのが良い?
中国やインドの人件費高騰に伴い、さらに多角化する昨今のトレンドを分析し、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、インド4ヵ国の特徴と人気のオフショア開発企業をご紹介します!
オフショア開発企業の選び方
IT開発案件の大半を占める人件費。
日本国内の価格競争が激化する昨今、ある程度の品質を担保しながらコストを削減するために採用されるのが人件費の安いアジア各国へのアウトソーシングです。
ただし英語でのコミュニケーションや外国人に対する納品管理など、不安なことが多いのも実際のところ。
そこで、まずは開発企業の選び方のコツについて2つのポイントを解説します。
類似案件の実績が豊富かどうか
まず重要視すべき点は、自社のやりたいことを明確にし、その領域で実績がある会社かということです。
オフショアと一口にいってもその発注要件は多角化しています。
サーバー構築などのハードウェア管理が得意な会社もあれば、よりフロントサイドのアプリケーション開発やデザインが得意な企業もあります。
金融業界ならば同様に保守・安全性の高い案件の実績があると安心ですし、エンタメ企業ならばユーザー分析やアジャイル開発に強みがある会社がおすすめです。
またコスト削減を優先するのか、予算を掛けてでも日本人のブリッジSEを入れるのか、など品質やスムーズなプロジェクト運営を優先するのかも自社の状況次第です。
オフショアには一般的に「受託型」と「ラボ型」の2タイプあります。
受託型は請負契約でサービス開発を一括して担うのに対し、ラボ型はより柔軟性が高く開発要因を概算で確保した上でニーズに沿ってタスクを依頼します。
前者は契約で定められた内容に責任を持って対応してもらえる一方で融通が効きにくいというデメリットがあり、後者には仕事がなくとも一定のコストが発生する一方で不測の事態にも協力してもらえるというメリットがあります。
オフショアのパートナーは、自社の業界、依頼したい内容、アウトソースの目的、そして依頼するタスクの質と量を総合的に鑑みて決定する必要があります。
まずは自社のやりたいことを明確化し、その上で候補企業の開発実績に目を通しましょう。
自社の求める案件がオフショアに類似する実績がある会社を選ぶことで、大幅な遅延やコミュニケーションミスといった基本的な失敗を回避することができます。
対応がスムーズかどうか
オフショアにトラウマや否定的な意見を持つ人の大半は、現地パートナーとのコミュニケーションに課題を抱えているケースがほとんどです。
たとえば以下のような声がよく聞かれます。
- レスポンスが遅く日本からプロジェクトのグリップが出来ない
- エンジニアの能力が期待したほどではなく、遅延が常態化している
予防策としては、日本側そして現地担当者の対応がスムーズかどうかを契約前によく見極めることです。
IT案件も基本的には人対人の付き合いですから、担当者との相性でアウトプットの質が大きく変わる可能性があります。
たとえば、日系の開発会社を経由するなら日本人担当者が橋渡し役として契約やプロジェクト管理をしてくれるので、日本人ならではのきめ細やかな対応が期待できます。
一方、現地企業と直接契約する場合、英語でのやりとりで危機感やニュアンスが伝わるようにより丁寧な対応が求められます。
加えて、国が変わればビジネスの常識やセキュリティに対する意識も異なるので注意が必要です。
もちろん日本人メンバーを加える方が料金は割高傾向ですが、現地企業との案件管理がもつれると度々出張が必要になる可能性もあります。
企業の選定においては、対応がスムーズかという観点でコミュニケーションコストもよく考慮しましょう。
オフショア開発先の選定ポイント
オフショア開発の黎明期には中国が主な発注先でしたが、近年は人件費の高騰によりターゲットを東南アジア各国にシフトしてきています。
ただし価格と技術力はある程度比例傾向にあるので、実際の業務レベルを見極めて相手国を決める必要があります。
この記事では、昨今オフショア先として人気の高いベトナム、フィリピン、ミャンマー、インドの4カ国を紹介します。
国別の相場単価は、高い順からインド>ベトナム>フィリピン>ミャンマーです。
ベトナム | 単価はやや高いが、開発能力もある程度高い |
---|---|
フィリピン | 単価はやや安く、デザイナー等クリエイティブ職に強み |
ミャンマー | 単価が安いが、開発能力も発展途上 |
インド | 単価も開発能力も高い |
特に人気のベトナムや新興国として盛り上がっているミャンマーでは、プロジェクトの規模によっては必要なエンジニアを確保できない可能性もあります。
その他の国にも特徴があるため、自社の状況と発注内容を総合的に考えて選定していきましょう。
ベトナム
日本国内や中国での開発よりも大幅に人件費を節約できるベトナム。
社会主義の新興国でありながら、政府が一丸となりICT教育を推進しているため大卒や高専卒レベルの高度エンジニアの数が揃いつつあります。
国民平均年齢が30代前半と若く技術への吸収力も高く、加えて勤勉で真面目な国民性から日本人との協働においても信頼を獲得しつつあります。
一方、その人気ゆえ人材の獲得競争が激化し、大規模プロジェクトでエンジニアの頭数を揃えるには余裕を持ったスケジューリングが必要です。
また、現地ではベトナム語が話されているため英語人材はインドやフィリピンと比べて少ないです。
現地でのプロジェクトマネジメントにおいてはベトナム訛りの英語に慣れる必要があります。
フィリピン
英語が公用語のフィリピンは、比較的安価で質の高い人材に加えて、高い教育水準と語学力のため東南アジアの中でも比較的マネジメントがしやすいのが魅力です。
日本との歴史的な繋がりも強く、現在もフィリピン全体で16,000人、首都マニラだけでも8,000人以上の日本人が在住しているので、長期出張などが生じても生活がしやすいというのもメリットです。
またエンジニアだけではなく、デザイナー等のクリエイティブ系の人材も確保しやすいと評判です。
一方、東南アジアの中ではスペインの影響を強く受けているので、働き方や考え方の面で西洋風の慣習が比較的見られやすいです。
率直なコミュニケーションを好むと理解した上で、マネジメントに取り組むのがコツです。
ミャンマー
情勢が不安視されるミャンマーも、単価の低さと日本企業の進出の多さから近年人気を集めています。
その魅力はベトナムやフィリピンと比べても頭ひとつ抜けて安い人件費。
IT関係の教育機関は、経済都市ヤンゴンだけでも100校以上あると言われており、今後の将来性にも期待できます。
複雑性の低いシステム構築でとにかく人件費を下げたい場合や、他国の人件費高騰後も中長期的にコネクションを構築してゆきたいならば進出する価値があります。
デメリットとしては、他に紹介すると比べて日本からの直行便の本数が少なく、また技術力や語学力のある人材確保の難しさ、そして情勢不安のリスクは認識しておく必要があります。
インド
最後に紹介するインドは、ご存知のとおりオフショア大国。
人口13億超で公用語は英語、さらにバンガロールなど戦略的に世界中のIT企業が集積した都市もあり、高等教育を受けた優秀なIT人材が豊富に揃っています。
長く欧米企業のオフショア案件を請け負ってきた実績があり、技術要件のレベルが高い案件であれば最初に検討すべき国といえます。
デメリットをあげるとすれば、多くの欧米企業とエンジニアの奪い合いで単価が高騰しつつあります。
そして東南アジア各国よりも移動時間が長く、気候や食文化の観点から日本人にはやや生活ハードルが高い傾向にあります。
オフショア開発企業5選の比較一覧表
オフショアのコツと候補国がわかったところで、実際に見積もりを依頼すべき主要企業をご紹介します。
それぞれに特徴があるため、ぜひ自社の求める要件に近しい会社を選び取ってください。
企業名 | 特徴 |
---|---|
TechAsians株式会社 | ベトナム人社長が率い、政府機関や大手企業との実績多数。 |
株式会社ベスピィ | ベトナムに拠点を置く2006年サービス開始の老舗。 |
株式会社 Wakka Inc. | システム導入コンサルティングや企画・デザインもカバー。 |
株式会社ハイブリッドテクノロジーズ | ベトナムで日系最大手。設計から開発までシームレスな一気通貫体制。 |
オルグローラボ株式会社 | ラボ型に特化しCMSやReact.jsやVue.jなどのモダンな開発環境が得意。 |
TechAsians株式会社
ベトナムへの発注を検討するならまず名前が上がるのが、ベトナム人社長率いるTechAsians。
システム構築からスマホアプリ、VR/ARまで幅広い領域をワンストップでカバーし、開発実績も政府系機関や金融機関など申し分ありません。
開発拠点はベトナムですが、企画段階から日本人エンジニアがしっかりと寄り添ってくれるサービスに定評があり、各種ISOも早期から取得し品質も折り紙付きです。
初めてのオフショアに対しても安心して依頼できる安心感があるので、まずは適度にコストダウンを試みながらアウトソースしてみたいという案件におすすめできます。
株式会社ベスピィ
2006年に個人事業主として活動開始した老舗で、主にベトナムでのオフショア開発事業を担うのがベスピィ。
社名の由来は「BestPPP」で、顧客に最善のProposal(提案)、Price(価格)、Patner(パートナー)を提供するというホスピタリティを表現し、その名の通りきめ細やかな編成が可能です。
基本的には発注者が現地エンジニアとチームを組むラボ型開発を得意としますが、オンラインのマネジメントがうまくいかない場合にはブリッジSEや通訳を手配することも可能。
得意な技術領域はPHPやMySQL等LAMP環境のウェブシステムの開発なので、オープンソースを駆使したプロジェクトに特に強みがあります。
株式会社 Wakka Inc.
Wakka Inc.も同じくベトナムとのパートナーシップを持つ会社です。
得意分野は、大規模な業務システムのみならずECサイトやカジュアルゲームなどスマートフォンアプリまで多岐に渡ります。
また、上流工程のコンサルティングやWebサービスの企画やデザインも依頼できるのが特徴です。
単にコストカットのためのアウトソースだけでなく、社内にリソースがなく企画段階から日本人エンジニアのサポートが欲しい場合や、企画・デザインに対しても積極的なインプットが欲しい案件にも向いています。
株式会社ハイブリッドテクノロジーズ
株式会社ハイブリッドテクノロジーズは、大手から中小企業まで290社の開発実績があり、ベトナムでの日系のオフショア開発としては最大手の企業です。
日本人のPMやUIUXデザイナーによるサービスの企画・設計といった上流行程から、ベトナムでの開発・リリース、アプリケーション保守といった下流工程まで一気通貫で開発を行います。
日本側にベトナム人のブリッジSEが常駐することでミスコミュニケーションを減らして最適な連携が得られ、専任メンバーでアサインされるチームにより高品質かつスピード感ある開発を実現しています。
日本とベトナムに常時500名以上のエンジニアがおり、26,000名以上の開発エンジニアリストの活用で、クライアントの開発要望に沿ったチームの組織も可能です。
受託型、ラボ型どちらも対応しており、ウォーターフォール開発やアジャイル開発といった開発手法を行程や時期に合わせて組み合わせたハイブリッド開発にて柔軟に対応してくれます。
言語や国民性のリスクを最小限に抑え、豊富なリソースにより最上流から下流までトータルに支援を受けたい企業にはぜひおすすめしたいです。
オルグローラボ株式会社
オルグローラボ株式会社は、フロントエンド開発に特化したラボ型オフショア開発サービスを提供し、ShopifyやWordPressなどのCMSやReact.jsやVue.jsなどのモダンな開発環境を得意としています。
バックエンド開発では、効率的なコードと優れた保守性、ユーザー体験を実現するために、スケーラビリティを重視した設計とセキュリティ対策を重視しています。
ラボ型に特化することで同じエンジニアと継続して開発を進められ、ノウハウの蓄積が可能で、急な仕様変更にも柔軟に対応することができます。
また、100名以上のエンジニアが常時在籍しているため、リソース不足の企業にとっておすすめのオフショア開発企業です。
全ての関係者の発展に貢献するという思いが込められた社名の通り、プロジェクト成功に貢献してくれる企業と言えるでしょう。
自社の開発内容に最適な開発会社を選ぶ
中国やインドの人件費高騰に伴い、東南アジア各国に広がるオフショア開発の波。
一口にアウトソースといっても、日本人のブリッジSEの有無や現地の技術力、そして削減できるコストと、自社に最適な開発会社を選ぶためにはポイントを総合的に検討する必要があります。
自社のプロジェクトの規模や求める技術力、そして希望する管理体制を吟味した上で開発会社を選ぶようにしましょう。