- 電子契約とは
- 電子契約の流れとメリット・デメリット
- 電子契約の各社サービス比較
コロナ禍で世界的にリモートワークが急速に浸透しつつある中で、印鑑をもらうためだけに出社しなければならない、といった経験をされた方も多いのではないでしょうか。
印鑑やサインの必要性が見直されつつある今、注目されているのが電子契約。
単にペーパーレスや効率化といった側面だけではなく、印紙代等の節約やコンプライアンスの強化など、紙の契約書よりも実利的である点も評価が高まっています。
- 伝統産業やシニア層でも、安全かつ簡単に利用できる?
- 代表的なサービスとそれぞれの特徴は?
- 具体的にどれくらいコストカットできるの?
電子契約の導入を検討している方へ向け、そのメリットやデメリット、そして各社サービスの特徴を具体的に解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください!
電子契約の利用の流れ
まずは電子契約の導入を検討している方へ、どのような流れで利用できるのか手順を説明します。
既存の電子契約のサービスは、システム上で文書を作成すれば、社内の申請・稟議・押印、そして相手先への送付・返送・保管を全てオンラインで完結してくれます。
細かな内容のやり取りが必要な契約内容のドラフト合意までは、従来どおりメールやペーパーベースで行うのが基本ですが、内容が固まった契約書の管理をサービス上で効率化できるというイメージです。
電子契約のメリット・デメリット
メリット
それでは、具体的に電子契約を導入するとどんなメリットがあるかを解説していきます。
①在宅ワークにおける業務効率化
まずは言わずもがな、事務作業の省略です。
電子契約を使えばペーパーベースでの稟議から押印、そして封筒に入れて相手先へ送るといったアナログの作業から解放されます。
これまで印刷・製本した契約書を人の手で持ちまわりバイク便や郵送を駆使して締結していたものが在宅ワークのまま実現すれば、何日もの時間の節約にも繋がります。
特にメリットを実感できるのは、秘密保持契約(NDA)といった、テンプレートがどの会社でもある程度固まっている性格のものです。
電子契約は内容が確定した契約書案の事務作業を効率化してくれるので、内容に大きな変更や調整が発生しない契約において最も効力が発揮されます。
NDAと同様に、労働条件通知書や条件更新通知など多くの相手に形式が決まった文書を定期的に送付する人事・総務・財務系の業務とも相性がよいです。
②全社的なコストカット
続いてあげられるのが金銭的なメリットです。
ペーパーベースの契約締結では、製本代や郵送費の他、印紙代など細かな経費が随所で掛かることをご存知でしょうか。
ひとつひとつは数百~数千円の細かな金額に見えますが、全社でみると大きな出費に積みあがります。
また、製本やバイク便を頼んだりするための人件費の節約や、押印のために出社するリスクの軽減も見込めます。
コロナ時代に全社的なコストカットが求められる今、年間で数十万単位のサービス利用料を支払ったとしても、対価として得られる経費削減のメリットは大きいものです。
③安全性とコンプラインスの向上
在宅ワークを頻繁に取り入れていると、機密書類を家庭用のプリンタで印刷したり、家庭用ごみとして処分したり、また家族や親しい人に見られそうになりヒヤッとした経験が多くの方にあると思います。
そんなコンプライアンス面の課題にも、電子契約は有効です。
書類を扱う時はシステム上で検索し、契約締結後はまたクラウド上に保存。
データベース上で全ての変更記録を残すことが出来る電子契約は機密性が高く、不用意な情報漏洩や改ざん、紛失のリスクも軽減できます。
また、たとえ何かのはずみでデータが消失しても復元することができます。
これまでの実印があれば代理人や部下でも押印できた契約のもろさや、たとえ鍵付きのキャビネで保管していても、誰がいつどこに持ち出したか分からない長年のセキュリティ体制と比べると、安全性も大きく向上するといえます。
デメリット
一方で、電子契約もまだまだ万能ではありません。
現在指摘されている3つのデメリットも紹介します。
①オンラインでは完結できない書類がある
第一に、一部の書類においては電子契約が認められていません。
代表的な電子契約を受け付けない書類には、定期借地契約や定期建物賃貸借契約といった不動産契約に関するもの、そして特定商品取引法で書面交付義務が定められているものがあります。
ただし昨今の状況から、社会全体で電子化を進める動きもあり、現在はNGでも近い将来に実現するケースも増えると予想されます。
また、バックデートの承認など、従来ペーパーベースでは柔軟に行われてきた便宜上の慣習が、電子化によりタイムスタンプで厳密に取り扱われることも実務上の不具合として指摘されています。
②社内外への説明コスト
実務的に電子契約化を進めるにあたり、社内外の理解を得なければならないことは大きなネックとなります。
どんなに機能の充実や安全性を説明しても、電子署名に懸念を示す意思決定者がいる可能性もありますし、法務部をはじめとする社内各部署と新しいフローを構築するために合意を得なければなりません。
また、自社内の交通整理ができたところで、取引先企業が導入していなければこれまで通りペーパーベースの契約を1件ずつ結ぶ必要があり、社会全体としての導入には、まだまだ準備に時間が掛かります。
③セキュリティ上の懸念
メリットの項目で、個人の業務においては安全性やコンプライアンスが向上すると説明したばかりですが、もちろんセキュリティ上の懸念もゼロではありません。
利用している電子契約システムのサーバーがサイバー攻撃やウイルス感染に遭うなど、インパクトの大きなセキュリティ事案が起きる可能性はあります。
電子契約のサービス比較
メリットとデメリットを比べたところで、人気のサービスをご紹介します。
各サービスとも利用プランに応じ料金や支援内容が定められているので、ぜひ比較した上で実際の導入を検討してみてください。
主なサービス
どのサービスも基本的な機能は有していますが、利用料金は月額数千円~10万円ほどと大きな差があります。
1か月あたりの送信件数や期待するサービス範囲、大企業か小規模の事業者かで使い勝手も異なるので、状況に応じて判断するのがおすすめです。
クラウドサイン
まず代表的なのは、弁護士ドットコム株式会社が運営し、現在約80%のシェアを占めるといわれるクラウドサイン。
TVCMも放送し、導入実績80,000社超と頭ひとつ抜けた実績を誇ります。
契約書だけでなく発注書・請求書・納品書・検収書・請求書・領収書などの形式にも対応し、加えて契約締結と同時にクレジットカード決済ができるクラウドサインペイメント機能が人気です。
ただし、契約書の送信はPDF形式のみで誤植があっても取消しできず、1回ごとの送信料は200円と他社と比較しても最も高い水準に設定されています。
スケールメリットは大きいので、大手企業など込々で月10万円ほどの利用料金を許容できる会社ならばクラウドサインがおすすめです。
paperlogic(ペーパーロジック)
paperlogicは、公認会計士や税理士、弁護士などのプロフェッショナル集団であるペーパーロジック株式会社が開発した、法律法令に完全対応した電子契約サービスです。
企業の経理・総務・法務の領域において、法律で保管が義務付けられている書類の完全ペーパーレス化をコンセプトに、「電子契約」「電子稟議」「電子書庫」といった文書電子化ソリューションをクラウド経由で提供しています。
認定タイムスタンプの付与機能も無料で付帯しており、契約書の送信・署名時だけでなく、電子稟議や電子書庫へ文書保管時など、あらゆるタイプの電子文書で改ざん防止に役立ちます。
料金は最も安いもので月25件2万円から。
件数に応じた料金設定で、印紙代や人件費、保管倉庫代の削減など導入効果を鑑みて最適なプランを選択できるのも利点といえます。
E-STAMP(イースタンプ)
建設業/運送業を中心に、最近シェアを急拡大しているのがイースタンプ。
サポートに重点を置いており、初めて電子契約を導入する企業に対して他社サービスに比べ安価で充実した運用サポートに加入できる点が特徴です。
電子契約の運用を社内で軌道に乗せるまで、E-STAMP社独自のノウハウにより導入企業に寄り添ったサポートを受けられるため、安心して紙から電子へ切替できると評判です。
電子契約システムとして必要な機能はもちろん、セキュリティ対策や保管までの機能のバランスも良く、手厚いサポート体制により、契約書電子化の導入に不安がある企業へもおすすめしたいサービスです。
NINJA SIGN
ベンチャー企業を中心に急速に支持を集めているのがNINJA SIGN。
他の電子契約サービスがドラフト作成後からの流れを電子化しているのに対し、NINJA SIGNの画期的なポイントは、テンプレートの編集からGoogleドキュメントを活用しシステム上に移行できる点です。
さらに、他サービスは従量課金制で1送信あたり料金が発生するためコミュニケーションミスが生じた際にも費用が掛かりますが、NINJA SIGNでは送信料は基本無料。
意思決定の早いベンチャーに好まれるのもよく分かる効率的なサービスです。
クラウドコントラクト
続いてクラウドコントラクトは、小規模事業者にとってコストパフォーマンスがよいサービスです。
IP制限やAPI連携といった初期設定や、各契約書のテンプレートの入力の必要がなくすぐに導入できる点、そして、月100件までの契約締結は月額費用の範囲内でサポートしてくれるという明朗会計が他にはない魅力です。
また、利用画面もシンプルで使い方もわかりやすいと評判です。
BtoBプラットフォーム契約書
最後に紹介するのは、企業間契約に定評のあるBtoBプラットフォーム契約書。
ワークフロー(社内稟議)をシステム上で一元管理する仕様のため、契約書だけではなく、あらゆる社内申請や承認業務に加えて、見積から請求までのすべての商取引をワンストップで電子化できる点が他にはないアドバンテージです。
加えて、3社間以上での契約など複雑な案件にも対応可能な点が人気を集めています。
自分に合ったサービスを選び取る
在宅ワークが浸透し、出張どころか出社も控える傾向が続く昨今、必要に迫られて利用人口が増えている電子契約サービス。
それに伴ってサービスも数多くリリースされ、導入をしたいと思ってもサービスの比較に時間を取られる状況になりつつあります。
ペーパーレス化による事務作業の効率化、印紙代や人件費の節約、そして安全性の向上といったメリットは大きいですが、社内外の関係者と足並みを揃えたり、バックデートなどの便宜上の習慣が踏襲できなかったりするなど、まだまだ越えなければならないハードルが残る電子契約。
社会全体の大きな流れに取り残されないために、コストを最小化したいフリーランスなどの個人事業主から、セキュリティを重視する大企業まで、自分に合ったサービスを選び取り、関係者とスムーズに導入を進めていきましょう。
こちらの記事では、AIによる契約書チェックサービスについてもまとめています。ぜひ参考にしてみてください。