AIが画像・文章から感情を読み取る「感情認識AI」は、幅広い分野で活用できることから注目度が高まっています。
「感情認識AIを自社のビジネスにも活用できないものか?」と、必要性や活用例に興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、感情認識AIの概要や仕組み、おすすめのサービス、導入事例について解説します。
感情認識AIとは
感情認識AIとは、人間の感情や気持ちを読み取るAI技術です。マイクやカメラなどで読み取った人間の表情や音声、または文章をもとに感情を分析します。
商談中の会話から顧客の感情を読み取ることや、ユーザーの利用する様子から気持ちを読み取ることができます。
2023年時点では、AIが認識できる対象は限定されており、「表情のみ」「音声のみ」といった一部の変化をとらえて、感情の判断を行っています。しかし、今後の技術の進化により、複数の要素を総合的に判断できる感情認識AIが登場する可能性も充分考えられます。
感情認識AIは汎用性の高さから注目されている
感情認識AIは、活用シーンの汎用性の高さから注目が集まっています。例えば、コールセンターでの通話分析や、会議中の顧客の感情分析に有用です。他にも、従業員の表情から体調や意欲を分析するなど、すでに多くの分野で活用されています。
医療分野でも期待度の高まっており、うつ病やPTSDなど病気の診断が難しいメンタルヘルス分野における診療支援として活用されています。また、患者自身のストレスや体調判断に活用することも可能です。
さらに、感情認識AIを他の技術と融合することで、活用シーンは増えると予測されてます。例えば、感情認識AIと瞳の動きを追跡するアイトラッキングなどを組み合わせ、自動車の運転者の様子を判断するといったサービスが開発段階にあります。
感情認識AIの4つの種類と仕組み
表情の感情認識AI
表情の感情認識AIは、カメラで撮影した人間の表情から感情を読み取ることができます。表情筋の微かな動きや、視線・瞳孔などを読み取り、感情を分析します。
喜怒哀楽の基本的な感情だけでなく、「興味がある」「興味がない」という関心度も読み取ることが可能です。例えば、商談中に先方の興味の度合いをしることで、今後の営業方針を決定できます。
表情の感情認識AIには、ランドマークアノテーションという技術が用いられています。ランドマークアノテーションは、目や鼻、眉、口などの顔のパーツをタグ付けする技術です。細かくタグ付けを行われるため、顔の表情の動きを把握することができ、感情を分析できます。
音声の感情認識AI
音声の感情認識AIの分析方法は、大きく分けて2種類存在します。「音声認識技術を活用する方法」と「音響解析する方法」です。
音声認識技術は、人間が話した言葉をテキスト化する技術になります。音声の感情認識AIでは、音声認識技術によりテキスト化された情報をもとに発言者の感情を分析します。そのため、文章(テキスト)の感情認識AIと仕組みは同じです。
音響解析する方法は、発言者の声の大きさや抑揚、イントネーションなどを分析します。声の特徴や周波数の変化などから感情を判定することが可能です。
文章(テキスト)の感情認識AI
人間が入力した文章をもとに感情を判定もできます。自然言語処理により、入力された文章の内容を判定し、感情を推察します。
文章から感情を紐づける必要があるため、事前に膨大な学習データを準備する必要があります。チャットボットやコールセンターなどで、ユーザーと実際に対話したデータなどから学習することで、感情認識の精度をアップすることが可能です。
技術やサービスにより、判定される感情の種類は異なります。「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」のような感情の傾向で分類するものもあれば、「怒り」「嫌悪」「恐れ」「幸せ」「悲しみ」「驚き」など細かく感情を分類するサービスも存在します。
生体情報の感情認識AI
生体情報から感情を計測することも可能です。脳波、脈拍、発汗などの生体情報から感情を判定します。
個々の生体情報を測定するために、専用の機器が必要という点が特徴です。近年では、スマートウォッチに生体情報を測定できる機能が搭載されているものが増えています。今後、生体情報を活用した感情認識AIの利用シーンは増えてくると考えられます。
一方で、専用の器具が必要なこともあり、他の感情認識技術と比較すると、生体情報を活用した感情認識AIの研究は発展途上とされています。そのため、他の認識技術と組み合わせることで、認識精度をアップさせることが望まれています。
感情認識AIの活用方法
マーケティングに活用
感情認識AIは、マーケティング分野での活用が特に注目されています。顧客が商品に対して、どのような感情や興味を抱いているのか分かることで、販売促進の精度を上げることが可能です。
一対一の営業シーンだけではなく、商品に対する消費者の感情を分析することで、よりリアルなユーザーレビューを集めることができます。商品開発などのシーンでも感情分析技術を活用することが可能です。
営業・販売職のトレーニングに活用
実際の営業シーンだけではなく、営業や販売職のトレーニングシーンにも感情認識AIは活用されています。
例えば、接客中の表情や言葉遣いが相手に対してどのような影響を与えるかを、感情認識AIが数値化します。客観的な数値をもとに自分の表情や提案の仕方を練習するため、トレーニングの精度を上げることが可能です。
バーチャル従業員として接客に活用
感情認識技術を活用し、よりリアルな接客をするバーチャル従業員も登場しています。公共施設や商業施設などのサイネージでAIキャラクターを見た経験がある方も多いのではないでしょうか。ユーザーや消費者の感情をふまえ、適切な提案やサポートをすることができるため、より的確な提案が行えます。
また、従業員の負担を削減する効果も期待することが可能です。人間のように研修をする必要がないため、すぐに即戦力として利用できます。
社員のストレス管理に活用
企業での「働きやすい環境」を実現するために、感情認識AIを導入され始めています。感情認識AIにより、社員の毎日のストレスを把握することが可能です。社員の表情や声の状態から毎日のストレスをチェックし、メンタルケアやメンタルトレーニングなどにつなげています。離職率の軽減や企業のプロモーションとしても有効です。
コールセンターの顧客対応の定量化に活用
現在、多くのコールセンターでは感情認識AIが導入されています。コールセンターの活用事例の特徴は、顧客だけではなくオペレーターの感情もモニタリングされているという点です。
オペレーターの音声からAIが感情を判断し、生産性の向上や、オペレーターの離職を防ぐなどの効果が期待されています。特にリモートで働くコールセンタースタッフのメンタルケアなどにも活用されています。
ゲーム・サービス開発に活用
感情認識AIを活用したゲームも増えてきています。例えば、プレイヤーの感情によって、ゲームの展開が変わっていくものがあります。自分のリアルな感情によって、ストーリーが展開するためより強い没入感を感じることが可能です。
アンケート分析に活用
アンケート調査の際にも感情認識AIは活用されています。具体的には、アンケートの自由記入欄に書かれた文章から、書いた人間の感情を分析します。定性データを数値化することで、客観的に分析しマーケティングにつなげることが可能です。
体調管理や感情の判定に活用
生体情報と感情認識AIを組み合わせることで、体調管理や感情の判定に活用できます。
汗や脈拍数などの生体情報から感情を判定することが可能ですが、その中でも「におい」は特に注目を集めています。例えば、手のひらから出る匂いを測定し、感情を判定。さらに体調管理へもつなげることができます。
表情から読み取る感情認識AIサービス
【無料】ユーザーローカル – 表情推定(感情認識)AI
引用:https://human-ai.userlocal.jp/
ユーザーローカルは、人物の表情から感情認識するサービスです。人の感情を「喜び」「怒り」「悲しみ」「驚き」「無表情」の5感情と数値で表現します。例えば、「悲しみ54%」というような客観的な数値で感情を確認できます。
さらにカメラに写った人物の姿勢などから、性別、年齢なども自動で推定してくれるオールインワンAIでもあります。
費用
感情認識AIの利用は、無料で利用できます。
企業情報
株式会社ユーザーローカルは、主にビッグデータ分析システムの研究開発を行っている企業です。感情分析だけではなく、人工知能チャットボットの運営なども手掛けています。
使い方
公式HPでは、動作デモを体験できます。指定の場所に人物の画像をアップロードもしくは、カメラで撮影。画像から「性別」「年齢」「表情」の3種類の数値を表示されます。
おすすめの人
ユーザーローカルの感情認識AIは、無料で利用することができるので、感情認識AIを試したいという人におすすめです。また、同社では感情認識AIだけではなく、チャットBOTなどさまざまなサービスも提供しています。そのため、感情認識AIを別の技術と組み合わせて使ってみたいという人におすすめです。
【有料】Affectiva
Affectivaは、顔面の動きに対してラベルを付与するFACS(顔面動作符号化システム)理論を活用し、感情を判断する感情認識AIサービスです。
世界87カ国、800万人以上の顔画像データをもとに、ディープラーニングを活用して感情を判断します。感情値の種類は「喜び」「驚き」「悲しみ」「怒り」「恐怖」「軽蔑」「嫌悪」「ニュートラル」「混乱」「センチメンタル」「Valence(肯定的表情 / 否定的表情)」、「Engagement(表情の豊かさや活性度)」の12種類です。
費用
感情認識AIを実装するためのソフトウェア開発キットの利用料金は、下記の表のように利用状況により異なります。
費用 | |
---|---|
トライアル | 無償 |
開発者ライセンス | 300万円/年 |
商用ライセンス | 個別見積 |
アカデミックライセンス | 60万円/年 |
トライアル期間は、60日間。開発者ライセンスやアカデミックライセンスに関しては年間契約のみです。
企業情報
Affectivaは、2009年にMITメディアラボからのスピンオフベンチャーです。感情認識AIの分野では、世界的に有名な企業としても知られており、CEO兼共同創立者のラナ・エル・カリウビィは、2014年、注目するべき最もパワフルな女性7人に選ばれたこともあります。
おすすめの人
感情認識AIを使ったアプリを開発したいという人におすすめのサービスです。面接用アプリなど既存のサービスはリリースしていますが、開発キットがあることから独自に開発を行いたいという人に向いています。
【有料】AIさくらさん
AIさくらさんは、顧客の感情を認識・解析し、適切な接客を行うことを目的として開発された感情認識AIです。サイネージなどに導入することで、高水準の接客スキルをもったスタッフとして対応させることが可能です。接客の中で取得した「年代」や「性別」など顧客の情報もデータ化することができるため、ユーザー分析を行い、商品開発につなげることも可能です。
費用
AIさくらさんを導入する場合、初期費用と月額料金が発生します。従量課金なしのシンプルな料金体系となっています。
POCプラン | スタンダードプラン | アドバンスプラン | プレミアプラン | |
---|---|---|---|---|
初期費用 |
90万円 | 90万円 | 90万円 | 90万円 |
月額料金 |
38万円 | 55万円 | 76万円 | 97万円 |
月額費用には下記4点が含まれており、サポート体制が充実している点が魅力です。
- システム利用料
- サポート利用料
- バージョンアップ費用
- データバックアップ
企業情報
「AIさくらさん」を開発した株式会社ティファナ・ドットコムは、2000年に設立された企業です。チャットボットだけではなく、面接サポートや稟議決裁サポートなど幅広いサービスを提供しています。商業施設や公共機関、県庁や市役所など地方自治体、国土交通省など公官庁への導入実績もあります。知名度が高い点も「AIさくらさん」の魅力です。
使い方
業務内容に合わせて、カスタマイズされて納品されるため、使い方は導入状況により異なります。登録やチューニングなども完全自動対応なため、メンテナンスなどの手間が必要ない点も魅力です。
おすすめの人
感情認識AIによって、業務効率をアップさせたいという人におすすめのサービスです。実際に公共施設や商業施設など多数の導入事例があるように、実用性の高いAIでもあります。
【有料】エモリーダー
引用:https://aismiley.co.jp/product/emoreader/
エモリーダーは、表情から感情を判断し「怒り」「軽蔑」「嫌悪」「恐れ」「喜び」「悲しみ」「驚き」の7種類にそれぞれ数値化します。約10万人の表情データを学習させており、93%の精度で感情を推定することができる世界水準のAIです。人種や性別文化圏に関係なく感情を認識することができる点も魅力です。
心理学と感情認識AIを組み合わせて使うことで、印象予測AIも作成することが可能です。下記のような感情も数値化しています。
- 信頼形成度
- 自己開示度
- ストレス度
- プレゼンテーション
- 営業評価
費用
導入状況により費用が異なるため、利用料金、初期費用ともに個別に問い合わせる必要があります。ただ、無料トライアル期間もあるため、気軽に相談できます。
企業情報
エモリーダーは、株式会社エモスタにより開発された感情認識AIです。2017年3月に設立され、従業員数は7人と少数精鋭の企業でもあります。
おすすめの人
高い精度の感情認識AIを活用したいという方におすすめのサービスです。個人事業主向けにもサービスを展開しているため、POC段階のアプリ開発を行いたいという方でも気軽に相談できます。
音声から読み取る感情認識AIサービス
音声から感情を認識するAIサービスは「Empath」と「Nemesysco」がおすすめです。それぞれの特徴について詳しく解説します。
【有料】Empath
引用:https://webempath.net/lp-jpn/
Empathは、音声から気分の状態を判定してくれるプログラムです。世界50カ国、4200社での利用実績があります。そのため、日本語だけではなくさまざまな言語にも対応しているという点が魅力です。
費用
初期費用は無料で、API利用回数によって費用は異なります。
プラン名 | API利用回数/月 | 月額利用料 |
---|---|---|
フリープラン |
250回まで | 0円 |
フリープラン (音声ファイルを保存) |
300回まで | 0円 |
有料プラン | 300回~ |
1,000円~ |
無料トライアル期間はありませんが、フリープランが充実しているため、気軽に導入を検討できる点がメリットです。
企業情報
Empathは、株式会社シーエーシーにより提供されているサービスです。同社は2014年に設立しており、感情認識AI「Affdex」の提供なども行っています。
使い方
Web API化されているため、Webサイト上に埋め込むだけで感情改正技術を導入できます。
おすすめの人
音声による感情認識AIを試験的に使ってみたい人におすすめのサービスです。本格的な利用は有料ですが、フリープランが充実しているため、段階的に導入を検討できます。
【有料】Nemesysco
引用:https://www.nemesysco.com/intone/
Nemesyscoは、音声認識ではなく音声波形の時間的な変化から人間の感情を検出します。音声を「感情的」「ストレス」「エネルギー」など合計151のパラメターに分解して解析し、より正確な感情を把握することが可能です。当初はイスラエル国境入出国審査を目的に開発されましたが、その後改良が加えられ、感情解析AIとしてサービスを提供するようになりました。
費用
費用は、個別に相談する必要があります。
企業情報
Nemesyscoは、2000年に創業したイスラエルの企業です。その歴史から音声による感情認識AIの草分け的存在の企業でもあります。
おすすめの人
コールセンターなど、音声のみで顧客とやり取りするようなシーンで感情認識AIを活用したいと考えている方におすすめのサービスです。しゃべっている言葉と感情が一致しないというような特殊な状況も見逃さずに感情を判定してくれます。
文章(テキスト)から読み取る感情認識AIサービス
文章から感情認識をするサービスの中では、「ユーザーローカル」や「日立」が特におすすめです。それぞれについて解説します。
【無料】ユーザーローカル – テキスト感情認識AI
引用:https://emotion-ai.userlocal.jp/
表情による感情認識AIのサービスとして、ご紹介したユーザーローカルですが、文字から読み取る感情認識AIサービスも提供しています。ディープラーニングを用いた解析AIを活用することで、入力された文字から書いた人間の感情を読み取ります。感情の種類は「喜び」「好き」「恐れ」「悲しみ」「怒り」の5種類です。それぞれの数値がレーダーチャートで表示されます。
費用
ユーザーローカル – テキスト感情認識AIの費用は無料です。
使い方
20~300文字の日本語の文章をボックスに入力し、「判定する」というボタンを押すと文章を入力した人間の感情を判断してくれます。
おすすめの人
音声だけではなく、表情などの情報から感情認識AIを使いたいという人におすすめのサービスになります。無料で利用できるため、感情認識AIを試しに触ってみたいという人にもピッタリです。
【有料】日立 感性分析サービス
引用:https://www.hitachi.co.jp/products/it/appsvdiv/service/sentiment-analysis/index.html#top
大手電機メーカー・株式会社日立製作所からも、感情認識AIのサービスは提供されています。テキストデータから大きく分けて「好意的」「中立」「悪意的」の3種類の感情を分析します。さらに、「モラル分析」「意外性分析」を組み合わせることで、新たな気づきを生み出すことに成功しています。
費用
費用は個別見積が必要です。参考価格として、下記の利用条件の場合は月額350万円~で利用が可能です。
- 通話記録時間:1日あたり200時間
- 席数:50席
- 契約期間:1年間
企業情報
日本屈指の電機メーカーである日立製作所。ITだけではなく、エネルギーやインダストリー、モビリティ、ライフ、オートモティブシステムの6分野でさまざまなサービスを提供している会社でもあります。
使い方
テキストを入力もしくは、SNSや口コミ、新聞などの記録などさまざまなテキストデータを読み込ませることで、書き手の感情を分析してくれます。
おすすめの人
感情認識AIを安心して利用したいという人に日立の感性分析サービスは、非常におすすめです。セキュリティ対策などもしっかりしているため、安心して利用できます。
感情認識AIの導入事例
感情で色彩が変化する照明アプリ「Utakata Mood Light」のリリース|スマートメディカル株式会社
スマートメディカル株式会社は、話者の感情により照明の色が変わる照明アプリ「Utakata Mood Light」をリリースしました。リビングや会議室、カフェなど、利用している人の感情を分析し、感情に応じて照明を変化させるものです。会話が盛り上がると暖色、盛り下がると寒色になるなど、会議の雰囲気を視覚的に体感できます。
笑顔トレーニングアプリ「心sensor for Recruit Staffing」を導入|株式会社リクルートスタッフィング
株式会社リクルートスタッフィングでは、感情認識AIを活用した表情トレーニングアプリを導入しています。Affectivaの心sensorの技術を活用し、好感度の高い笑顔を作る練習ができる「笑顔トレーニング」となっています。主に、派遣スタッフの研修エリアなどに設置され、ゲーム感覚でトレーニングができるようです。
営業職員のセルフトレーニングアプリ「AIロープレ」を導入|明治安田生命
明治安田生命では、社員スタッフの育成のために、感情認識AIを活用したセルフトレーニングアプリ「AIロープレ」を導入しています。同アプリは、感情認識AIを活用することで、自分の笑顔が相手に対してどのような印象を与えるかを分析するツールです。表情を「笑顔」「好感度」「真剣」「お詫び」の4種類に分類し、100点満点で採点されます。客観的な数値で自分の表情を点数化できるため、「伝えたい感情」や「望ましい表情」を知ることが可能です。
ユーザーの投稿内容を「mindlook」で分析|電通グループ
電通グループは、テキストから分析された感情をもとにマーケティングが行える「mindlook」の提供を開始しています。SNSなどに投稿されたテキストを解析し、マーケティング戦略に生かすことを目的としています。「mindlook」は、日立との協創されたサービスであり、日立の高精度な感情認識AIを活用しています。
感情認識AIの課題
広い分野において活用され、かつ将来性のある感情認識AIですが、課題も抱えています。ここでは、下記2点の課題について詳しく解説します。
感情の研究分野が未成熟である
感情認識AIの最大の課題は、そもそも感情の研究分野が未熟という点です。感情認識AIの多くは、アメリカの心理学者ポール・エクマンによって提唱された「怒り」「嫌悪」「恐怖」「喜び」「悲しみ」「驚き」の6つの感情を基本に開発が行われています。しかし、2010年代後半から、この6つの分類に疑問が持たれるようになり、感情の研究も変革期を迎えています。成熟期にない感情の研究をベースにしているという点が、感情認識AIの課題です。
個人情報・セキュリティ面の懸念
感情に対する個人情報やセキュリティ面の懸念も感情認識AIの課題の一つです。一人ひとりの感情は、ある意味、人間にとって最大級に隠しておきたいセキュリティ情報ともいえます。しかし、感情を日常的に収集されることに対する、セキュリティ対策や法整備などは現段階では、行われていません。
今後、サーバーやデータ管理のセキュリティ対策、感情の匿名化などの技術も求められるようになるでしょう。感情認識AIの利用に対する社会的な理解が広がる制度づくりが必要という点も感情認識AIの課題です。
AI使用時のセキュリティについては、下記記事でも詳しく紹介しています。
>AI使用時のセキュリティは大丈夫?リスクや対策方法を詳しく解説!
今後、感情認識AIの活用が進みそうな分野
VR・メタバース
VRやメタバースといった仮想空間では、アバターにユーザーの感情を投影させることで、ユーザー間のつながりをより濃密なものにすることが期待されていす。ユーザーの感情が仮想空間で表現されることで、企業からも1人ひとりのメンタル状況に応じて、より最適なサービスの提案できるようになります。
ヘルスケア・医療
人手不足が深刻化している医療や介護の現場でも感情認識AIの活躍は期待されています。判断が難しいうつ病などの診断のサポートなどへの活用が進むことで、医療従事者の負担を軽減することが可能です。
また、予防医療としても期待されています。うつ病などの精神病は、本人や周囲がその兆候に気づけず症状が悪化してしまいます。感情認識AIを活用することで、病気になる前にケアを始めることにもつながります。
介護現場では、認知症を抑制するために試験的に対話型AIが導入されています。ユーザーとAIとの対話を通して、認知症などを予防することを目的としており、ユーザーの感情を認識することで、より予防効果のある会話をすることが可能になります。
自動車業界
自動車業界における感情認識AIは、すでに試験的に導入が開始されています。運転中の疲労やストレスをリアルタイムで分析し、警告を表示したり休憩を促したりします。現在は、「眠い」「疲れた」という単純な感情が中心ですが、認識できる感情が複雑化することで、さまざまなサービス提供につながると考えられています。
感情認識AIに関する疑問・Q&A
Q. AIの活用事例は?
感情認識AIの活用事例は、非常に多岐にわたります。導入対象から分類すると「顧客」「社員」の2種類に分類することが可能です。
サービスの対象が「顧客」の場合、感情認識AIは下記のようなシーンで実際に導入されています。
- コールセンター
- 商業施設や公共機関の受付
- マーケティング
サービスの対象が「社員」の場合、下記の2点のようなシーンで活用されています。
- 社内研修
- 社員の健康管理
今後、技術の進歩や融合により、感情認識AIは、より広い分野での活用事例が増えていくでしょう。
まとめ
この記事では、感情認識AIについて詳しく解説しました。感情認識AIは汎用性の高さから注目が集まっており、コールセンターでの通話分析や会議中の顧客の感情分析、医療分野、メンタルヘルス分野などで広く活用されつつあります。
さらに、感情認識AIを他の技術と融合することで、活用シーンは増えると予測されてます。感情の研究分野が未成熟であることや、個人情報・セキュリティ面の懸念はあるものの、今後の技術の進化によって解決できる点も多いはずです。
本記事でご紹介したおすすめのサービスや導入事例を参考に、感情認識AI導入の検討材料にしていただけると幸いです。